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漫画家ジョージ秋山先生の訃報

代表作「浮浪雲」で知られる漫画家のジョージ秋山先生がお亡くなりになった。享年77才。まだお若いとも言えるのに残念に思う。ご冥福をお祈りします。

我々の世代は幼い頃の娯楽としてテレビアニメが隆盛だったが、それ以前からあった娯楽が少年マガジンや少年サンデー、少年キングなどの漫画雑誌だった。その最初期の出会いとして覚えているのがジョージ秋山先生が描くギャグ漫画で、幼い私は先生の「ほらふきドンドン」と「パットマンX」のファンだった。私にとって先生はまずギャグ漫画の人だった。ユーモアというものを最初に教えてくれた人だったのかも知れないと今思う。ドンドン和尚は何事も「わっはっはっ」と笑い飛ばしていた。


もう何年も前にそうした思い出を手元に置いておこうと、オークションでその2つの作品を手に入れようしたことがある。その時「ほらふきドンドン」は当時物しか出品されていなくて、痛んでいる割に値段が高くて手が出せず、「パットマンX」の復刻版を1冊だけ入手した。そんなこともあったせいか、なんとなく「ほらふきドンドン」の方が「パットマンX」よりも先に出会った古い作品だと思っていたが、ウィキペディアで調べると「パットマンX」の方が先に連載が始まっていたらしい(パットマンX/1967-68年、ほらふきドンドン/1969-70年)。

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先生はその後、ギャグ漫画を離れて大人社会の裏側を題材にしたサスペンス風の漫画を描くことになるのだが、その頃の作品にも思い出がある。絵を描くのが好きだった私はハガキに漫画のイラストを描いて雑誌に送ったりしていたのだが、そうして送られてきたイラストから優秀なものを数枚選び巻末のコーナーに掲載する習慣がどの漫画雑誌にもあった。その中でも少年キングに載るのは他の雑誌に比べて難しかった。少年キングでは掲載されたものにコメントが付くのだが、普通に描くだけでは評価されない。何かしらコンセプトが必要なようで、構図なり表現なりに元の漫画やシーンを解釈した意図が感じられるものしか評価されていない。私は少年キングに載るために思案した末、ジョージ秋山先生の社会派サスペンス漫画に狙いを定めた。焦る表情の主人公を対角線上の斜めに配置して手前に描き、その背景をガラスが割れたような形で3つくらいに分割して主人公を脅かすクセのある登場人物たちを配置した。


幼心にちょっとベタな構成だなとは思いつつ、それ以外のアイデアが浮かばなかった。墨汁でペン入れをして送ったら、それが見事に掲載された。1等賞ではなく確か佳作という3番目くらいの位置付けだったと思うしコメントも辛口だったと記憶するが、キングに掲載されるという目標がかなって嬉しかったし、自分の中でちょっとした誇りだった。12、3㎝ほどの小さな盾も送られてきて大切に飾っていた。


私が描いたあの漫画はどの作品だったのだろう?「アシュラ」か、「銭ゲバ」か、実はよく覚えていなくて確かめようとウィキペディアを見て驚いた。「アシュラ」も、「銭ゲバ」も、少年キングの掲載ではなかったのだ。


しかもその頃に少年キングに連載された作品が一つも書かれていない。ネットを検索してみたが私が描いたと思われる作品が見当たらない。「ザ・ムーン」という作品の中高生風の主人公は似ているが、何やらロボットが出てくる作品のようなので違う。これはどういう事?もしかして、ずうっと少年キングと思っていたのが間違いで、少年サンデーか何かだった?


いろいろ考えているうちに突然思い出したのが、当時ジョージ秋山先生から、応援ありがとう、というようなハガキをいただいた事だった。盾と一緒に送られて来たのか違う機会にいただいたのか思い出せないが、漫画の主人公の絵と先生のコメントが書かれたハガキだった。よく考えれば、私がイラストで描いたと思っていた中高生風の主人公は、そのハガキに描かれたものだったかも知れない。それは残念ながら直筆ではなく印刷だったのだが、やはり嬉しくて大切にしていたことは思い出したし、大学時代の下宿にも飾っていたような気もする。しかし、どうも記憶がごっちゃになって、よくわからなくなってきた。背景にサングラスの男は描いたと思うが主人公はあやふやだ。盾もハガキも手元にないし、実家にあるかも知れないが阪神淡路の震災で失くしているかも知れない。


とここまで書いて、ふと昔の年賀状入れにはいってないかと思い調べたら、、、出てきた!いただいたハガキが。

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少年ジャンプ新連載の案内だったのだ。昭和48年(1973年)8月5日の消印だから11歳の時。単独に送られてきているのでイラストが掲載された後のことだろう。主人公の配置は記憶と違っているので、記憶のものはやはり自分で描いたイラストだったかも知れない。


改めてネット検索してみると、その頃少年キングに掲載していたと思われる「ギャラ」という作品があることが判った。社会派漫画のようなのでこの作品である公算が高い。どこかで記憶を捏造してしまったかと焦ったがそんなことはないようだ。ただ、確たる証拠もないので、ちゃんとした年表に当たって調べてみたい。

ジョージ秋山先生に限らず漫画家の先生方は、当時思いの外たくさんの作品を描かれていて、幼い我々はそこからいろいろなものを享受していた。これを機に受け取ったものをもう一度検証してみたいと思う。(n.m.)


# by matsuo-art | 2020-06-09 12:06 | その他  

クロッキー

休校中の課題として、研究室生全員にクロッキーの課題を出しています。
身近な植物や人物、野菜やくだものを描くというものです。
講師であるわたしもクロッキーを描きました。
今は、直接会って絵を見せ合うことが難しいため、こちらで紹介します。
自分自身の作品の題材を探るため、クロッキーをやアイデアのメモを貯めています。
ぜひ、塾生のみなさんも、クロッキーをして、課題やデッサンに活かしたり、その後の制作に活用したりしてください。(Y.M)

■クリスマスローズ(切り花と鉢植え)
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■すいせんと椿のつぼみ
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■レモン、しいたけ、食用菜の花(のらぼう菜)
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# by matsuo-art | 2020-04-30 15:10 | 美術  

センター試験 テスト前と当日のアドバイス

18日(土)にセンター試験が始まります。来年度から名称が変わりますし、当初言われていたほどではないにしても内容も変わります。最後のセンター試験ですね。

現場で実力を発揮するには ”適度な緊張” が必要で多少の緊張はあったほうがよいのですが、緊張しすぎるとうまく力が発揮できません。かつてNHK教育テレビで放送されていた「テストの花道」の内容がテスト前と当日のアドバイスとして役立つと思うので再録します。

センター試験1週間前の心得として先輩受験生の体験談や失敗談から導かれた格言は「実力を発揮するなら普通どおり」。新しい事はやらないほうがいい、ということです。

たとえば苦手科目を最後に集中的にやりすぎて肝心の得意科目の勘が鈍ったという失敗例。合格した先輩たちは、基礎をまんべんなく見直すこと、を勧めています。実践をしながら、まちがったところの基礎を見直すのがよいようです。親にも変わった事はしてほしくない、と言っていましたが、試験前にトンカツなどのカツ類を食べ過ぎて胃もたれになった、親の出すハーブティーを断れずに飲み過ぎて体調不良、など食事に関する失敗例は、どれも良かれと思い普段と違うことをしたから。不安を感じる新たなことには断る勇気も受験生には必要です。

時計は必需品だと言っていましたが、これについては当研究室テキストの「入試前の心得」にも書いています。実は研究室の受験生で時計を忘れていって時間が分からなかったという失敗をした人がいましたが、わからない分、デッサンを早め早めに進めて、今までで1番充実したデッサンに仕上がった!という怪我の功名の人もいます。でもとにかく、テストには時間配分がとても大事なので、時計は必ず持っていきましょう(ケータイは使えません)。

本番で注意することとしては、マークミスが一番に上がっていました。途中でマークがずれている事に気づいたら焦ってしまいます。絶対に避けましょう。対策としては大問1問ごとにチェックする、ということ。また、わからない問題にも、とりあえずどれかマークしておいて後で見直すという印をつけて先に進む、そうして空白の問題を作らない事でマークのズレを防ぐ、というアドバイスもありました。
あと、トイレの場所を確認しておくことも大切、ということでした。

また、受験当日の用意として、
1、会場までの道のりを調べておく。
2、試験会場で勉強する専用ノートを作っておく。
3、軽食を持参。
4、体温調節できる服。
5、下痢止め。
を上げていました。

また、試験現場で緊張しないための対策もいくつか紹介されていましたが、なかでも「筋弛緩法」は、効果がありそうです。

体に力を入れて筋肉を収縮させてから一気に力を抜いて筋肉の緊張をゆるめるという方法ですが、紹介されたやり方は、それを目、口、肩で行うというものです。試験会場の現場で行うのにちょうど良くて使えるのではないでしょうか。本番で緊張しそうな人は今から家で勉強する前にやって慣れておいて、現場の会場に座ってからもやってみてください。(実際やってみると、緊張すると出にくくなるという唾液が分泌されるのが実感できます。)

これらを参考にして、受験生はこの時期、そしてセンター本番を乗り切っていきましょう。(n.m.)

# by matsuo-art | 2020-01-12 13:50 | その他  

2020年 正月

新年明けましておめでとうございます。

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# by matsuo-art | 2020-01-08 00:00 | その他  

兵庫県立美術館「山村コレクション展」

兵庫県立美術館「山村コレクション展」へ行ってきました。1950年代から1980年代までの日本の現代美術で構成されたこのコレクション、個人的な一番の目玉は同世代の80年代の作品、とりわけ杉山知子と松井紫朗の作品でした。杉山知子さんの作品は1984年のアート・ナウに出品されたものですが、私はその時、同じく出品作家だった松井知恵さんのインスタレーション作品の設置を手伝っていました。この年のアート・ナウは、杉山知子さんと松井知恵さん2人の大きな作品が、そのレベルと感性において際立っていました。


杉山さんは同じ京都芸大油画の上回生で、段ボール製支持体の大きな作品を制作室スペースいっぱいに寝かせて描いていました。アクリルで彩色した上にニスを塗って、明るく華やかであると同時に深みと力強さのある色です。全体像を見ながら制作することはできなかったと察するのですが、スケッチがそのまま拡大したような伸び伸びとおおらかな、それでいて造形的な構造をも押さえたあの形態が生まれていることは、今考えても驚異的です。
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松井紫朗氏は1985年のアート・ナウに出品した「Budding Bag」と「Flower Vase」の2点が村山コレクションに入っていますが、「Flower Vase」は今回展示されてませんでした。県立美術館の常設展で幾度か観ている「Flower Vase」に対して、Budding Bagを観たのは、もしかしたらアート・ナウ以来かもしれません。打ち出された鉄の質感と切り出された木の質感との組み合わせが、その形態とも相まって心地良い感覚を与えてくれる作品です。松井氏の作品の中でも形態的な動きがある作品であって一番好きな作品かもしれません。
他にも80年代の作品として関口敦仁氏の作品、岡崎乾二郎氏の作品、等を観ることができました。
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関口敦仁氏の作品

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岡崎乾二郎氏の作品

もう一つの目玉は、白髪一雄と元永定正の抽象絵画です。京都芸大に入学した当初、具象絵画を目指していた私は岡本太郎の「今日の芸術」を読んだことを契機に現代美術系の教室へと移動しましたが、その頃に感化された作品が白髪さんや元永さんの作品です。山村コレクションには白髪さんの作品がたくさんあることがわかりましたが、力のある作品を改めて観ることができました。(n.m.)

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# by matsuo-art | 2019-10-04 13:45 | 展覧会