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パウル・クレー展

兵庫県立美術館で催されている『パウル・クレー』展に行ってきました。
クレーの作品は画集で見たり、展覧会の中の数点あを見たことがありますが、まとめてたくさんの作品を見る初めての機会でした。

とても楽しい展覧会だったのですが、その楽しさは行く前に想像していた方向とまるで別角度の楽しさで、言葉で言い表すなら素材のワンダーランドという具合でした。
クレーの作品では、使われている素材のバリエーションが多く、支持体、画材ともに不思議な組み合わせやこだわりにあふれており、作品キごとのキャプションにそれぞれ細かく書いてあり、それを追いかけながら作品をたどりました。
例えば、わたしがとても気に入った『いにしえの庭に生い茂る』という絵では
<紙に白亜の地塗り、水彩、厚紙に貼付(本紙上下にペンによる帯)>
となっています。
他の作品『植物的で不可思議』では
<紙に黒の地塗り・水彩、水彩で彩色した第二の紙に貼付、さらに厚紙に貼付(本紙および第二の紙の外周に水彩・ペンによる枠)>
であったり、また別の作品『小道具の静物』では
<ラミー織り布に油彩、厚紙に貼付(本紙外周にグワッシュ・ペンによる枠)>
となっていてます。
紙をあらかじめ彩色しておいたり重層的に貼ったりし、その作品の縁取りにまた別の紙を彩色して貼ってあったりします。
紙の種類もいろいろで、布地も多く使われています。
図版ではにじみに見えていた絵の端の部分は、実は紙の漉いた端や布の繊維だったりしました。
糊絵の具というものも多く使われていました。
糊絵の具は市販のものではなく、クレー自身がいろんな素材を絵の具に混ぜ込んだオリジナルの画材だそうです。

この展覧会には「だれにも ないしょ。」という副タイトルがついています。
それはクレーの作品を読み解くひとつの鍵が『秘密』という言葉で表されます。塗りや貼り込の層となった作品の内側に隠された表面から見えない絵、モチーフとして繰り返し現れてくる記号や図像、いくつかの作品をつなぎ合わせることで1つの絵としてつながっていることなど、作品からはさまざまな秘密が見え隠れします。展覧会は作家の仕掛けた様々な秘密に向き合う形で構成されています。
わたし自身はテーマや図像の象徴的な扱いや意味性、世界観やモチーフそのものにはあまり惹かれることはなく、ただひたすら素材の森と、作品の見え方に没頭し楽しみました。

その中で、特に気に入った作品をいくつか取り上げます。
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さきほどあげた
『いにしえの庭に生い茂る』
<紙に黒の地塗り・水彩、水彩で彩色した第二の紙に貼付、さらに厚紙に貼付(本紙および第二の紙の外周に水彩・ペンによる枠)>
これは絵の見え方も、主題も一番好きだった作品です。

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『独国旗のある朝食』
<紙に水彩・ペン・鉛筆、厚紙に貼付>
ポストカード大の作品。小さいのに強くひきしまっています。

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『アフロディテの解剖学』
<紙に白亜の地塗り・水彩、厚紙に貼付>
図像の混じり合った見え方と、細かい表現、色合いに惹かれます。

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『快晴』
<紙に膠の地塗り・水彩、厚紙に貼付>
明快ですかっと気持ちがよい作品です。

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『都市の境界』
<紙に水彩、厚紙に貼付>
これは点の並びや形、配置や動きで作品を動かしていく様子が、水墨画の山水画の「点」の表現と近く、興味深い。
クレーの作品にはこの作品以外にも、モチーフをそのものを表現しながらも、色の流れ、筆致のあり方などの絵の構成要素のそれぞれが、別の次元で空間をが存在するような複雑な見え方をするものがあり、わたしが「幸福の絵画」と勝手に名付けている池大雅の作品の効果を思い出させ、うれしくなりました。

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『柵の中のワラジムシ』
<綿布にパステル、厚紙に貼付>
パステルの油が彩色されていない白地の綿布の部分ににしみ出しているのが見える。
画集で見たときは好きになれなかったのだが、綿布のあぶらのじわっとした存在感が非常に柔らかで愛しい作品で、大好きになりました。

実はこの展覧会は明日11月23日(月・祝)で終わります。
見に行ったのは一週間ほど前のことでした。作品のよい印象が長く抜けずに頭の中に響いているので、ぎりぎりとなりましたがよい展覧会として紹介させていただきました。

『パウル・クレー』だれにも ないしょ。
2015年9月19日(土)〜11月23日(月・祝)
兵庫県立美術館
http://www.artm.pref.hyogo.jp

                                  (Y.M.)
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by matsuo-art | 2015-11-22 23:07