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イタリア美術紀行ーローマ編・その2(ヴァチカン美術館)

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9月23日、開館時間の9時に間に合うようにヴァチカン美術館にバスで向かいました。サン・ピエトロ聖堂の前で降りて美術館の入り口に向かうと、すでに入館を待つ人々の長蛇の列が出来ていました。なぜこんなに入館待ちの列が出来るのかというと、入場者が多いのはもちろんなのですが、その入場者を空港のセキュリティチェック並みの検査をしてから入場させているからです。(今回の旅行では、ウフィツィ美術館でも同様のセキュリティチェックがありました。)結局入館できるまでに1時間くらいかかりましたが、予約していなかったのに1時間待ちですんで良かったと思いました。

ヴァチカン美術館は、絵画館以外にも、ギリシア・ローマの遺物のセクションや古代文明のセクション、近・現代絵画のセクションなどもあり、膨大なコレクションを誇っています。そしてそれに加えてラファエロたちの手がけた壁画のある部屋や、システィーナ礼拝堂があります。

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まずは絵画館から。ラファエロやレオナルド、カラヴァッジオなどの有名な作品が目立ってはいますが、一方、カルロ・クリヴェッリやピントリッキオなどの意外な作品がこっそりとあり、「おっ!」と思わされました。

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彫刻のセクションでは、ラオコーンやベルベデーレのトルソなどが観客を集めています。ラオコーンは16世紀の始め頃ローマで出土の知らせを受けて教皇からミケランジェロが派遣されて購入したもの、ベルベデーレのトルソはミケランジェロに強い影響を与えた紀元前1世紀アポロニオスによる作品。
私はジャン・ロレンツオ・ベルニーニの天使像の粘土による試作が何体か並んでいるコーナーが興味深かったです。およそ350年もの時間を超えて、崩れかけた粘土や中の鉄芯が制作の過程を生々しく伝えているように思えました。

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ギリシア・ローマ時代の遺物を集めたセクションでは、修復中の様子を見せてくれるスペースもありました。

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さらにはエジプト文明や他の古代文明の遺物のコレクション、中世の宗教的な美術・工芸品を集めた部屋などを経て、ラファエロが手がけた「アテネの学堂」などのフレスコ画がある部屋にようやくたどり着きました。

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そして近・現代の絵画や彫刻を展示したセクションを過ぎた後、クライマックスのシスティーナ礼拝堂です。
礼拝堂の天井と正面にミケランジェロによる巨大壁画が描かれています。天井には創世記をはじめとする旧約聖書をテーマとするフレスコ画がいっぱいに描かれ、正面には新約聖書の最後の審判をテーマとするフレスコ画が描かれています。
私はシスティーナ礼拝堂の壁画を観るのはこれで3回目です。1回目は天井が修復中だったので最後の審判(修復前)のみ、2回目は天井が綺麗になっていましたが最後の審判が修復中。そして今回初めて全部が綺麗になった状態で見ることができました。
(システィーナ礼拝堂内は撮影禁止のため、写真は撮っていません。)
堂内に溢れる人々の中で、首が痛くなるほどじっくりとミケランジェロの仕事を見つめて目の奥に焼き付けた後、閉館時間の6時に近くなったので礼拝堂を出ました。結局ほぼ8時間美術館内にいたことになります。
礼拝堂からは、まるで吐き出されるようにスルスルとサン・ピエトロ聖堂の入り口脇に出て来れますが、外に出たら、朝のいい天気が嘘のように雨が降っていました。

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サン・ピエトロ聖堂に参詣し、その壮大な空間(ドームの設計はミケランジェロ、ブロンズ製の大天蓋はジャン・ロレンツォ・ベルニーニによるもの)や、中に安置されているミケランジェロの彫刻「ピエタ」を観たあと、外に出てもいっこうに雨脚が弱くなる気配がありません。思い切ってかなり離れたバス停まで雨の中を走り、バスでホテルに戻る事にしました。
本当は夕方からは、ザハ・ハディドのデザインした新しい国立21世紀美術館(MAXXI)にヴァチカンから向かい、帰りはまたローマを夜散歩しながらホテルに戻ろうと思っていたのですが、もうミケランジェロの仕事で締めくくった後は何も観なくていいや、という気分でした。

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明日は朝一番でチェックアウトして空港に向かい、日本に帰るため飛行機に乗ります。これにて今回のイタリア美術紀行は終わりです。(Y.O)
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by matsuo-art | 2015-10-29 16:30 | 美術  

イタリア美術紀行ーローマ編・その1(ローマ夜散歩)

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9月22日夕方、ローマ、テルミニ駅に着きました。アッシジから鈍行列車で2時間半ほどの距離です。
ホテルにテェックイン後、テルミニ駅前のバスターミナルからすぐにローマ現代美術館(MACRO)に向かいました。ここは新しい美術館で、今回訪れるのを楽しみにしていました。行ってみると建物はきれいでかっこよく、カフェやショップなども充実した感じでしたが、どちらかというと常設のコレクションを持たない研究施設のような感じです。この時期観るべき展示もやっておらず、ちょっとだけ中を歩いてみて早々に出てきてしまいました。

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この時間からではもう他の美術館もしまっているし、教会に入るのも無理かもしれません。せっかくだからバスには乗らずに、夕方のローマを特に目的なくぶらぶら歩いてみる事にしました。
ローマは、24年前にイタリア政府留学生だったときに、数ヶ月毎に外務省に顔を出さなければならなかった折や、しばしば知人宅に滞在させてもらったりして、訪れるたびにけっこう歩き回ったのでよく知っているつもりでしたが・・・、なにしろ24年前のことですから位置関係などもあやふやになっており、簡単な地図を片手の散策です。

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MACROから、ローマ時代の城壁ピア門を経て、9月20日通りに沿って中心街の方に向かって歩いて行きます。共和国広場や、ミケランジェロが古代ローマの遺跡跡を利用して設計したサンタ・マリア・デリ・アンジェリ教会を経て、さらにナツィオナーレ通りを歩いて行くと古代ローマ、トラヤヌス帝時代の遺跡フォロトライアーノに出くわしました。トラヤヌス帝の記念柱が立っています。ここからヴェネツィア広場を挟んだ向こうにヴィットリオ・エマヌエーレ2世記念堂も見えています。今回ローマに来て初めて「ローマだ!」っていう気持ちになりました。そしてそこから、とりあえずパンテオンを目指して歩いていくことにします。

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パンテオンは古代ローマの汎神殿で、現在は教会になっています。ラファエロなどのお墓もここにあります。
(このような巨大ドームを架ける技術は古代ローマ以来長らく失われていましたが、初期ルネッサンスの建築家ブルネレスキがフィレンツェのドゥオーモの巨大ドームを架ける方法を考案し、復活させました。)
パンテオンは開館していたので中を観れましたが、観光客で渦巻いていました。

パンテオン内を早々に出て、トラステヴェレに行ってみることにしました。もう日が落ちて大分暗くなってきています。トラステヴェレはテヴェレ川を渡った向こう岸の庶民的な町で、「ピッツァを食べるならトラステヴェレが良い」とガイドブックに書いてあったので。

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トラステヴェレは本当に活気があって人通りも多く、どこのレストランやピッツアリアもものすごく賑わっています。そんな地元の人で溢れる忙しそうなピッツァリアの一軒に入り、茄子のピッツアを食べた後、再びテヴェレ川の中の島であるティベリーナ島に架かる古い橋を渡ります。そしてそこから古代の劇場跡のマルケルス劇場を経て、ミケランジェロの設計したカンピドリオ広場を目指して丘を登っていきます。

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カンピドリオ広場は、アンドレイ・タルコフスキー監督の映画「ノスタルジア」のラストの、世を憂う初老の男性が演説するシーンで出てきた、あの広場です。広場中央にマルクス・アウレリウス騎馬像が立っています。
広場を横切って丘を下っていくと、古代ローマ時代の政治・経済の中心地だったフォロロマーノがあります。そしてさらにその暗い古代の遺跡を右に見ながら東に進むと、古代の闘技場コロッセオが見えて来きます。
そしてコロッセオから、ネロ帝の黄金宮殿(ドムス・アウレア)を横目で見ながら坂道を登り、カブール通りを目指して北へ進みます。

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カブール通りをしばらく行くとサンタ・マリア・マッジョーレ聖堂が見えて来きました。4世紀に建てられて以来、改築を重ね現在の姿になったという古い歴史を誇る教会であり、ローマのランドマークの一つです。ここまで来るとテルミニ駅近くの投宿先のホテルはもうすぐです。

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これで大体ローマ旧市街の中心部分を、ぐるっとほぼ半周した感じになります。ホテルに帰り着いたのは夜中になってしまいました。
明日は いよいよヴァチカンに行きます。(Y.O)
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by matsuo-art | 2015-10-28 11:37 | 美術  

イタリア美術紀行ーアッシジ編

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9月21日の夜、アレッツオから列車でアッシジに到着。31年ぶりの再訪です。
鉄道駅からバスに乗り、小高い山の上にあるアッシジの街に向かいます。バスの終着駅からホテルまでは少々距離があり、暗くなってしまった石畳の街路を重い荷物を引きずって歩かなくてはなりません。アッシジの街は、曲がりくねった細い路地や坂道ばかりで階段などもあり、たちまち自分がどこを歩いているのかわからなくなってしまいました。暗いので地図もよく見えず、(そもそも地図は平面なので)山の中腹に上下に道が積み重なっているこの街では、自分が歩いている道が地図上のどの道なのか実感がありません。しばらくのあいだ当てずっぽうに歩いていたら、偶然にホテルの前にたどり着くことができました。

翌朝、早く起きて夜明けのアッシジの街を散策しました。
聖フランチェスコ聖堂ではすでに早朝のミサが始まっています。聖堂前の広場では、聖フランチェスコさながらのつぎはぎだらけの糞掃衣(のような)を纏った独りの老人が、祈りを捧げながら膝で歩いて聖堂に向かっていっていました。アッシジは、清貧の聖人と呼ばれた聖フランチェスコが生まれ、キリストからの啓示を受けて修道士となった後の活動の拠点であり、そして亡くなった街です。彼の遺徳を偲ぶ人々が巡礼のためにやってきます。

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朝食後、聖フランチェスコ聖堂に改めて参詣し、上部聖堂のジオットの聖フランチェスコの生涯を描いた一連の壁画を観ました。(近年、これはジオット作ではないという有力な説もあるようなのですが。)有名な、小鳥に説教する場面が入り口すぐのところにあります。28の場面が描かれた中で、私は「聖痕を受ける聖フランチェスコ」の場面が特に美しいと思いました。
(聖フランチェスコ聖堂内は撮影禁止のため、以下の堂内の写真や壁画の図版は、絵はがきなどからのものです。)

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下部聖堂にはシモーネ・マルティーニによる大きな壁画がありますが、その脇にチマブーエによる聖母子像が描かれていました。(チマブーエによる壁画は上部聖堂にもありますが、痛みが激しくほとんど見えなくなってしまっています。)天使に囲まれる聖母子の隣には聖フランチェスコが立っています。一目見るや否や、このチマブーエの絵の放つ強いパワーに圧倒されてしまって、しばらくのあいだ目が離せなくなってしまいました。

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昼すぎまでアッシジを散策した後、鈍行列車に乗っていよいよローマへと向かいます。(Y.O)
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by matsuo-art | 2015-10-27 08:59 | 美術  

イタリア美術紀行ージオット/ マサッチオ/ ピエロ・デラ・フランチェスカ

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1)9月18日朝、スクロヴェーニ礼拝堂の中に描かれたジオットのフレスコ画を観るためにヴェネツィア・メストレから列車でパドヴァに向かいました。パドヴァは、メストレから35分くらいのところにある古くからの大学街です。
スクロヴェーニ礼拝堂の観覧は予約と観覧料の先払いが必要で、イタリアに来る前にネットで日時を予約していました。
スクロヴェーニ礼拝堂を管理している市立美術館にかなり早く着くと、受付のおじさんが、予約時間前だが定員に空きがあるから今すぐ観覧していい、と言います。本来ならば予約時間の1時間前には着いていなくてはならないので早めに行っていたのですが、時間が節約できてラッキーでした。
礼拝堂内は厳格に温度や湿度の管理がされていて、一度に観れる人数は25人程度までで、観覧時間は15分。堂内にいっぱいに描かれたジオットの絵を15分で観なければなりません。
係の人の案内に従って堂内に入ると、ジオットの豊かで柔らかい色彩が空間いっぱいに感じられます。やはり図版で見る色とは全く違うように思います。ディテールを観るために双眼鏡だけは持って入っていたのですが、結局あまり役に立ちませんでした。それよりも、堂内に溢れる柔らかい色彩を身体で感じた方が良いと思いました。
(ここは写真撮影が不可だったので内部の写真は撮っていません。)
付け加えると、この市立美術館は職員たちが皆親切で礼儀正しく、すごく気持ちよい美術館でした。

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2)9月20日昼、フィレンツェ、サンタ・マリア・デル・カルミネ教会の中にあるブランカッチ礼拝堂にマサッチオとマゾリーノが描いたフレスコ画を観に行きました。ここは31年前に来たことがあるのですが、夕方だったので暗くて、壁画の一部である「楽園追放」の部分がほのかに見えた事ぐらいしか覚えていません。

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ジオットが開いた新しい絵画の地平(ゴシックの形式性から、より自然な知覚をもとにしたスタイルへの移行)をマサッチオが受け継ぎ発展させた、という美術史的な重要性ばかりではなく、マサッチオの絵には人物の形態のおおらかさや彫刻的な力強さなどから来る普遍的な魅力がある様に思います。

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3)9月21日昼すぎにシエナを発ち、再びバスに1時間半ほど乗って、アレッツオの聖フランチェスコ教会の中に描かれているピエロ・デラ・フランチェスカのフレスコ画「聖十字架伝説」を観に行きました。
ピエロ・デラ・フランチェスカはマサッチオの少し後の世代で、マサッチオの遠近法空間をさらに進化させました。しかし長らく忘れられ、(フェルメールなどと同じく)20世紀になってから美術史家のロベルト・ロンギらによって「再発見」された画家だということです。その明るい色彩、静かで理知的な画面を見ていると、クラシックな重厚感よりはむしろ平明でモダンな感覚があり、それもわかるような気がします。

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実はこの3箇所のフレスコ画は、24年前のイタリア滞在の際にも訪れ、門前までたどり着いたものの「修復中につき観覧不可」で、後ろ髪を引かれながら引き返した思い出のあるものです。ですから今回の旅行では必ず見たい作品でした。それぞれすっかり修復されてきれいになった画面を、感慨深く観ることができました。(Y.O)
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by matsuo-art | 2015-10-26 01:13 | 展覧会  

イタリア美術紀行ーシエナ編

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9月21日、早朝フィレンツェを発ちシエナに向かいました。フィレンツェからは急行バスで1時間半ほどの道のりです。

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今回の旅行は非常に限られた日程だったのですが、シエナには是非行きたかったのです。31年前の旅行の折にも立ち寄ったことがあるのですが、そのときにはあまりピンと来ていなかったシエナ派の絵画が年を経るごとにだんだんと好きになって来たからです。シエナの街そのもののように中世の香りを濃厚に残す、瞑想的なシエナ派の絵画を国立絵画館と市庁舎内の美術館で概観しました。

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市庁舎内に描かれたシモーネ・マルティーニのフレスコ画「マエスタ(荘厳の聖母)」は、師匠のドゥッチオの「マエスタ」を踏まえたものですが、確かに師匠の作より華麗で新しい感覚があります。
『聖母の都市シエナー中世イタリアの都市国家と美術』(石鍋真澄著/吉川弘文館)の中ではドゥッチョとシモーネ・マルティーニを次のように比較しています。
『つまるところ、ドゥッチョがイタロ・ビザンティン絵画を克服してシエナ派絵画を確立した、「イコン画家」という性格をのこした地方的画家だったのに対し、シモーネ・マルティーニは様式、図像、技法などさまざまな点で新しい要求にこたえた、いわば「新時代の画家」であり、シエナ派絵画を広くヨーロッパに広める役割をはたしたのである。』
ただ、シエナに来る前にはフィレンツェのウフィツィ美術館でドゥッチョの代表作の巨大イコンに感銘を受けていました。シエナでシモーネ・マルティーニを観ながら、師匠の絵のもつ「重厚さ、深さ」と弟子の絵の「華麗さ、軽やかさ」の間にある表現の幅の大きさにシエナ派絵画の懐の広さを感じた次第。

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それにしても、トスカーナの風景は本当に美しいですね。国立絵画館の窓からや、市庁舎の展望テラスから見渡した赤茶色の(バーントシェンナの)瓦屋根の家々とその向こうに広がる空間を一日中、ずっとみていたい気持ちでした。(Y.O)

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by matsuo-art | 2015-10-25 01:32 | 展覧会  

イタリア美術紀行ーフィレンツェ編・その4(パラティーナ美術館/ ラファエロ「大公の聖母」)

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9月20日昼過ぎからは、ベッキオ橋を渡ってアルノ川の南、ピッティ宮殿の中にあるパラティーナ美術館にラファエロの聖母子像を観に行きました。

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この聖母子像は「大公の聖母」と呼ばれているそうで、2年前の東京でのラファエロ展の目玉として日本で公開されていましたが、そのときは観ていません。しかし、その展覧会のフライヤーに大きく印刷されたこの絵の複製は、仕事場の常に目に入る場所にあり、折りに触れて観て感銘を受けていました。

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パラティーナ美術館を訪れるのはなぜか今回が初めてだったのですが、入るや否や絵画が壁に3〜4段掛けになっているいかにも貴族の館風の展示にびっくりしました。そしてそんな部屋を進んで行くと、雑多な展示の中にまぎれてひっそりとお目当ての絵がかけられていました。そのあっけなくもさりげない掛けられ方にまたびっくりしましたが、あまり観客の注目を集めていなかったおかげで細部に至るまでじっくりと観ることができました。

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とにかく丁寧な描写と柔らかいトーンに感心します。そして画面が放つ微光。眼をこらして至近距離から見たり、窓からの光に反射させるようにして斜めから見てみると、透明な絵の具を細い筆でビッチリと描き込む事で精妙なトーンを作っている事がわかります。

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ただこの絵は、そういう技術的な事だけでは語り尽くせない、ラファエロの良いところが凝縮された作品だと思いました。(Y.O)
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by matsuo-art | 2015-10-24 10:42 | 展覧会  

イタリア美術紀行ーフィレンツェ編・その3(マリノ・マリーニ美術館)

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9月20日朝、マリノ・マリーニ美術館に行きました。ここを訪れたのは初めてです。
古い教会跡を改装した美術館で、白い漆喰の壁に木の手すりなどが温かく調和し、4層になっている展示階に非常に有機的な関係性を持ってマリノ・マリーニの彫刻、絵、デッサンなど大小の作品たちが配置されています。

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建物のディテールや窓、そしてそこから差し込む光までもが作品と呼応し、一つ一つの作品というよりも、空間との関係性そのものとしての美術館全体が何か、一つの物語を語りかけてくるかのようです。このような見事な配置の美術館は初めて見たような気がします。

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この美術館を構成した人は誰なのでしょう? この美術館は1988年の開館で、マリーニ自身は‘80年に亡くなっていますから本人ではないはずなのですが、作家本人以外の人が構成したとはちょっと思えないような気持ちにさせられるほど、作品と展示空間が見事なまでに有機的に関係付けられているように思います。そんな私が感じた「関係性」を何とか写してみたいと思って写真をたくさん撮ってみたのですが、難しいですね。ここは、訪れる人が自身の目で新しい「関係性」を発見し、物語を紡ぐための開かれた空間なのでしょう。

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空間が語りかけるユーモアやウイットに富んだ物語を楽しんでいるうちに3時間が経っていました。素晴らしい美術館でした。(Y.O)

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by matsuo-art | 2015-10-21 16:13 | 展覧会  

イタリア美術紀行ーフィレンツェ編・その2(ウフィツィ美術館)

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9 月19日の昼からは、いよいよウフィツィ美術館です。ここも多分31年ぶり(?)の再訪になります。
ウフィツィ美術館はイタリア・ルネッサンス以降の絵画のコレクションでは質・量ともに最大級で、建物自体も16世紀末のフィレンツェ政府の庁舎だったもの。とにかくたくさんの量の作品を観ることになるので、気合いを入れて向かいました。

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入口での手荷物のチェックなどを経て階段を3階まで上がると、まず第1室にジオット、ドゥッチオ、チマブーエの巨大イコンがそびえる大きな空間があります。たちまちこれらの作品の素晴らしさに釘付けになってしまい、4〜50分はこの部屋から動けませんでした。はじめからこんな調子では今日中に最後まで行き着けるのだろうか、と不安を感じながらさらに部屋を進んで行きます。

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ウフィツィ美術館の収蔵する膨大な絵画をほぼ時系列的に観て行った中で、第1室のジオットなどの他に今回最も心に残ったのは、フィリッポ・リッピとレオナルド・ダヴィンチ、そしてミケランジェロでした。フィリッポ・リッピとレオナルド・ダヴィンチからは表現するということの「過剰さ」(から来る異様さ)を強く感じました。(あと、パルミジアニーノからも。)そしてミケランジェロの「トンド・ドーニ」からは、そのような表現の過剰さが異様なオーラを放つと言うよりは、何か、技術や作品に込めるものが最高度に集約されて、あたかも突き抜けてしまっているような凄さを感じました。

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ただ、レオナルド、ミケランジェロ、ラファエロといったルネッサンスのスターたちも、ヴェロッキオ、ギルランダイオ、ペルジーノなどそれぞれの師匠からの影響をしっかりと受け継いでいるな、という事も強く感じました。そうした歴史の厚みをリアルに感じられるのは、時系列的、あるいは同時代的に作品を比較しながら観れるウフィツィのような巨大な美術館の利点だと思います。

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クライマックスのボッティチェリの部屋など3階を一通り見終わって、「あれ?ラファエロやティツイアーノやカラヴァッジオがなかったな?それに以前はレンブラントやルーベンスなどもあったはずだが?」と呑気に考えながら階下に降りていったら、まだ別室や2階にそれらの作品が大量に残っていました。

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閉館間際まで6時間あまり。館内を行ったり来たりしながら、気になる作品を目の奥に焼き付けるようにじっくりと見つめてきました。(Y.O)

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by matsuo-art | 2015-10-20 13:36 | 展覧会  

イタリア美術紀行ーフィレンツェ編・その1(サン・マルコ美術館)

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9月18日の夜、フィレンツェに「銀の矢」特急で移動。
翌19日、朝食後すぐに宿泊したホテルからサンマルコ美術館に直行。ここは1984年春に訪れて以来31年ぶりの再訪となります。とにかくフィレンツェに着いたら一番に行きたいところでした。
サンマルコ美術館はもと修道院で、内部には何十という僧房が並んでいます。そしてその僧房の一つ一つにフラ・アンジェリコのフレスコ画が描かれています。訪れた人はそれを観るために僧房を一つ一つ回ります。

僧房のある階に行くため階段を上がるとすぐに、有名な「受胎告知」が迎えてくれます。

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本当に全部の僧房に、いろいろなキリストの生涯のエピソードを精緻な筆致で描いています。その量と集中力にまず感銘を受けます。そしてその色彩の柔らかさと透明感・・・。

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自身も修道士であったフラ・アンジェリコにとって絵を描く事はなにより信仰の証であったでしょうし、描かれた僧房で過ごす修道士にとっても、その絵をよりどころにしながら大切に生活を共にしていたのではないかと思います。

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一階の回廊や大きな部屋にもフレスコ画が描かれ、大きなテンペラによる祭壇画もあります。ここは本当にフラ・アンジェリコの作品で荘厳された(この言葉がふさわしいかどうかわかりませんが)場所です。
朝の、ひと気のない静かな僧房を巡りながらフラ・アンジェリコのタッチを見つめる素晴らしい時間を過ごすことができました。(Y.O)

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by matsuo-art | 2015-10-19 17:06 | 展覧会  

イタリア美術紀行ーヴェネツィア編・その4(ペギー・グッゲンハイム・コレクション 、その他)

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ヴェネツィアでは、その他に6カ所の美術館などを回りましたが、主なところで撮った写真をアップしておきます。

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1)ペギー・グッゲンハイム・コレクション
ここは戦後アメリカ現代美術のパトロンだったペギー・グッゲンハイムの邸宅を改装した美術館で、彼女の収集した作品を展示しています。室内にはぎっしりと小さいながらもアメリカ現代絵画の優品を展示してあり、(ヴェネツィアで観るアメリカ美術という意外感も含めて)楽しめます。

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このときは小企画展として「ジャクソン・ポロックの壁画」展をやっていました。ポロックの「壁画」は、個人的には'99年MOMAでのポロックの回顧展を観に行って以来の再見です。ヴェネツィアで再び見れるとは・・・。(「壁画」は撮影禁止につき、写真は関連のドローイングです。)

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2)プンタ・デラ・ドガーナ
ヴェネツィア本島の南端にある、17世紀に建てられたもと税関の建物を安藤忠雄氏がリノベーションしたヴェネツィアの新名所です。あるフランスの現代美術コレクターのコレクションからチョイスされ、広大な空間を贅沢に生かしながら展示されています。れんが造りの壁と安藤氏のトレードマークとも言えるコンクリート打ち放しの壁や床の質感が緊張感を持ちながらも調和しています。

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プンタ・デラ・ドガーナの展示室の窓から、カナルグランデを挟んでサンマルコ聖堂とパラツォ・ドゥカーレが見えています。運河を進んでいるのは水上バスです。

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3)パラツォ・ドゥカーレ
サンマルコ聖堂の隣にあるヴェネツィア総督府のあった宮殿。写真はその中の一室。大きな空間の内部が金ピカの額入り油彩画で覆い尽くされていて凄まじい。こんな部屋がいくつかありました。

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帰りの水上バスから見たカナルグランデに浮かぶゴンドラ。背後に見えるのはアカデミア橋。次回来たら、ヴェネツィア本島の周辺の島々も回ってみたいなあ。(Y.O)
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by matsuo-art | 2015-10-18 22:11 | 展覧会