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「他人の時間」展、「ヴォルフガング・ティルマンス」展、池水慶一「今年の夏、私は象になった。」展

9/21(月/祝)に国立国際美術館「他人の時間」展、「ヴォルフガング・ティルマンス Your Body is Yours」展、アトリエB1 池水慶一「今年の夏、私は象になった。」展の3つの展覧会を巡りました。

最初に行った「他人の時間」展は、アジア、オセアニア地域の若い作家20名による展覧会です。『経済的不均衡や価値観の違いによる衝突が増加する現代のグローバル社会』で『どのように「他人」と接続し、あるいは何によって隔たれているのかを考えてみること』、そして『それぞれが生きる社会や歴史、そして自らが描く世界を問い直すこと』がコンセプトです。

リサーチ型の作品が多いと思われるこうした美術展を楽しめるかどうかは、まずは観る側が積極的に作品につき合えるかどうか、つまり作家の出自などのバックボーンを知り、一目見ただけではよく分からないと思った表現でもある程度の時間を割いて鑑賞できるかどうか、によります。要するにその時につき合う気力と時間があるかどうかですが、例えば今年初頭に京都で開催されたパラソフィアでは時間がなかったので、ビデオ作品はことごとくパスしました。

しかし、この展覧会ではありがたいことに簡単な作家紹介と作品説明が各展示ごとに付いていたので、それを導入として作品を理解していくことができました。

特に印象に残った作品をいくつか挙げると、
海外生活を終えて沖縄に帰郷した作家本人を思わせる主人公が幼なじみのYと再会し、Yの祖父とアメリカ兵、そしてベートーベンの音楽との関係を独白で綴っていくミヤギフトシの叙情的な映像作品。
南ベトナム解放戦線ゲリラの写真家として活動したヴォー・アン・カーンによる、1970年当時の生々しくも社会主義国的造形美を有した2枚の記録写真。
日本がかつて台湾、サイパン、韓国などに立てた神社の鳥居が、その本来の役割を捨てて現在に残る様子を撮影した下道基行の写真〈torii〉シリーズ。
第二次世界大戦中にフランス、イギリス、日本の3重スパイとして実在したベトナム人のライ・テックを描いたホー・ツーニェンの映像作品「名のない人」。ドラマの断片のような映像の上に彼の人生のナレーションが語られるが、重く粗い印象を残すその映像は、同じ俳優が出演するいくつかの映画から切り取られて再構成されたものだという。

思えばこれらはどれも先の戦争の影響というものがキーになっています。

「他人の時間」展を観た後、1階上の展示会場にある「ヴォルフガング・ティルマンス」展へ。
本来この日のメインだったはずのティルマンス展なのだが、「他人の時間」展を観たあとでは頭を切り替えることが難しい。かつて「エイリアン」と「ブレードランナー」の2本立て映画を見に行ったときに、二本目のブレードランナーの世界に頭を切り替えるのが難しかったのを思い出しました(それでもこの時観たブレードランナー初回公開バージョンは、私の映画ベスト10に入ります)。

この10年の作品を網羅したというティルマンス展のいくつかの部屋は、写真集での既視感により想像の範囲内であり、既視感のない展示はもはやゆっくりつき合う気力が残っていないという状態。それでもざーっと観た25年間の全写真集の展示の中に、ほしいと思う作品集が数点ありました。
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その後、京阪なにわ橋駅にあるアトリエB1、池水慶一「今年の夏、私は象になった。」展へ。1960年代初頭から関西を中心に活動してきた池水慶一さんの、象をモチーフにした3つの作品を中心にして、その経歴紹介も含めた展示になっています。
昨年、推定66才で亡くなった天王寺動物園の象、春子。その姿を等身大に撮った白黒写真の作品2点は、1つが1969年に発表したもの。もう1つは2013年に撮って今回発表されたもの。まずその大きさの違いが目につきますが、耳の形やしわの在り方など観てみると、なるほど同じ象だというのが分かります。2013年の春子は真横からきれいに撮られていますが、高さ3.2mほどあるという大きな写真作品が35mmフィルムで撮られているというのは驚きでした。作家ご本人が在廊されていて、半年かけて完成した2013年版の制作裏話も聞かせていただきました。(n.m.)
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by matsuo-art | 2015-09-23 08:52 | 展覧会