<   2011年 10月 ( 6 )   > この月の画像一覧

 

Ryuichi Sakamoto Trio : Europe 2011

坂本龍一トリオのヨーロッパツアー、10月29日のパリ第1回公演の模様がUSTREAMで全編公開されています(3日間ほど視聴できるようです)。

ピアノで静かに始まる一曲目、オーケストラのような音が入って来た次に鳴ったピアノの不協和音に驚き、タイトルを見ると、「fukushima #01 」。思わずたたずまいを正す。

不協和音に喚起される感情。
改めて音楽の力を感じる。
(n.m.)
[PR]

by matsuo-art | 2011-10-31 01:59 | 音楽  

磯江毅=グスタボ・イソエ展/奈良県立美術館

f0189227_2316383.jpg

奈良県立美術館で開催されている「磯江毅=グスタボ・イソエ」展に行ってきました。

まず会場はじめに掲げられている年譜を見てびっくりしたのは、磯江氏は受験時代を、僕も通っていた大阪・手塚山にかつてあった小さな画塾で過ごされたということで、妙に親近感を持ちながら展覧会場を回り始めることになりました。

美術館ほぼ全館にわたってたくさんの精緻なリアリズムの作品が展示されています。
印象深かったことは、油彩画とほぼ同じくらいの比率で、鉛筆によるモノクローム(厳密には水彩などによって薄く彩色されているものもある)の作品がたくさんあったことで、デッサンというものが油彩画のためのエスキスなどといった立場ではなく、油彩画同様の独立した価値を持つ作品として取り組まれていることでした。
実際、僕が展覧会中で最も感銘を受けた作品も、展覧会のポスターにもなっている「深い眠り」と題された女性のデッサンでした。(上の画像はその一部です。)これはかなり至近距離で見ることができましたが、「とにかく描いて」あります。
遠くから見ると滑らかな女性の肌のトーンなのですが、近くで見ると明るいところまで、薄くてシャープなハッチングがびっしりと入っていて、とにかく高い集中度を持って自分が求めるトーンを執拗に求め続ける姿勢に圧倒されます。
また、テーマの中心になる女性像の密度に対して、背景などは割にざっくりとラフにペイントされていたり、水彩によるシミや、描いたり消したりしているうちに生じたのであろう様々なノイズなどもうまく鉛筆のタッチの中に取り込んでいます。こうした絵のメチエの集積が高度な観察と渾然一体となって、静謐ながらじわじわと迫ってくる底光りのする画面を生み出しているように思いました。

展覧会場の最後には、大阪での受験時代に始まり、スペインに渡られてからの学生時代に描いた夥しい数の人体デッサンやクロッキーが展示されていますが、習作にも関わらず高いクオリティーのもので、非常に興味深く観ることができました。

絵画を勉強している人はぜひ観に行かれることをお勧めします。(Y.O.)

特別展 磯江毅=グスタボ・イソエ ~マドリード・リアリズムの異才~
2011年10月22日(土)~12月18日(日)
午前9時~午後5時(金・土曜日は午後7時まで)
入館は閉館の30分前まで
休館日:11月14、21、28日、12月5、12日の各月曜日
[PR]

by matsuo-art | 2011-10-26 23:23 | 展覧会  

杉本文楽「曾根崎心中・付(つけた)り観音廻り」

8月に神奈川芸術劇場(KAAT)にて現代美術家 杉本博司の演出による人形浄瑠璃「曾根崎心中・付(つけた)り観音廻り」が上演された。そのドキュメンタリーが16日(日)にNHKで放送されたのを見て「これはすごい!」と思った。この夏にそんな歴史的な舞台が行われたことなど全く知らなかった(知っていたからと言って見に行くことができたわけではないけれど)。

300年前に近松門左衛門によって書かれた「曾根崎心中」は、演出の都合上、現在は原文の一部が割愛されて上演されている。杉本博司版では、近松の原文をいっさいカットせずオリジナルに忠実な内容で、しかも、従来の文楽の枠を越えた、全く新しい演出を試みた。

「恋を心中によって成就させることによって、二人の魂が浄土へと導かれるという革命的な解釈が、はじめて近松門左衛門によって披露されたのが、この人形浄瑠璃『曾根崎心中』である。」
「第一段の「観音廻り」には、死に行くお初が、実は観音信仰に深く帰依していたことが伏線として語られる。初演当時、封建道徳に深く縛られていた恋する若い男女に、心中は爆発的に流行した。この世で遂げられぬ恋は、あの世で成就される、と思わせる力がこの浄瑠璃にはあった。江戸幕府は享保8年(1723)、『曾根崎心中』を上演禁止とし、心中による死者の葬儀も禁止した。」
「それから232年後の昭和30年になって、この浄瑠璃はようやく復活される。しかしその数百年の断絶のうちに、我々は近松時代の語りや人形の遣い方がどのようであったか、という記憶をほとんど失ってしまった。」
「私は今のこの世にあって、私の想像力を飛翔させ、古典の復活こそが最も現代的であるような演劇空間を試みてみたいと思った。」
 杉本博司【前口上】より


昭和に復活された「曾根崎心中」では第一段の「観音廻り」がそっくりカットされているので、仏教的な意味合いが抜けている。江戸幕府が禁止令を出したほどに当時心中が流行した、というのは我々の普通の感覚では信じ難い。ただ、私はつい最近、村上春樹氏によるオウム信者へのインタビュー集「約束された場所で」を読んだところなので、現世を相対化する思想が時に予想もしない破滅力を持ち得る恐ろしさがあることもわかる。

明るい光を排して暗闇に人形が浮かぶ演出を施し、本来左右の動きだけの文楽に縦の奥行きの動きを導入し、背景に巨大スクリーンを使い、一人遣いの人形を新たに作り、新たに唄をつくり、それを人間国宝をはじめとする伝統芸能の至宝たちが演じる。新しい試みのオンパレードである。スクリーンには杉本氏の写真作品「松林図」も映り、「観音廻り」の最後には、なんと杉本氏所蔵の仏像の名作「十一面観音立像」の実物が舞台に登場するという贅沢さ!

次は是非とも関西で、と思うところだが、番組の最後を見ると、次回は国内を飛び越えてフランスでの上演となりそうだ(確かにフランスのほうが国内よりも最先端の日本文化を評価してくれるふしがある)。(n.m.)
[PR]

by matsuo-art | 2011-10-18 22:55 | 舞台  

生誕120周年記念 岸田劉生展 / 大阪市立美術館

f0189227_20101217.jpg

大阪市立美術館で開催されている「岸田劉生展」に行ってきました。

油彩、水彩、デッサン、デザイン画、日本画など200点以上の作品によって、岸田劉生の生涯とその芸術をわかりやすく概観できるように構成されていて、非常に充実した展覧会だと思いました。出品作も、「切通之写生」と「麗子像」という2点の重文作品を中心として、肖像や静物などの比較的知られた作品は一通り網羅されており、普段美術の教科書や画集などの図版でしか見たことのない作品にも出会えます。(前後期で作品の入れ替えあり。)

岸田劉生は、白樺派との交流から後期印象派やフォービズムの影響下から本格的な制作を始め、しかしそれに飽きたらずに古典へと遡行し、ファン・アイクやデューラーなどの北方ルネッサンスの作品に酷似した写実的なスタイルへとたどり着きます。
f0189227_20122895.jpg

「古屋君の肖像」や「麗子五歳之像」に見られるその精緻な写実は圧倒的です。しかし劉生はその即物的な描写のあり方をさらに展開し、「麗子像」や静物画にみられるような写実的であって単なる写実ではないような独特のスタイルを創始します。そのように画家としての思想=スタイルを確立してゆく1913年から1921年頃までの作品はどれも充実していて、こちらも画家の苦闘に負けないようにじっくりと見入ってしまいます。
f0189227_2013458.jpg

f0189227_2014313.jpg

僕自身そのほとんどが実作を見るのは初めての作品ばかりでしたが、その中でも、今まで図版でも見たことのない作品で、これはすごいなと思ったのは「支那服着たる妹照子之像」でした。これは「ゴヤかベラスケスじゃないの?」というくらいに達者な筆致の成熟した油絵で、図版の色がよくないんですが、本物は服のブルーがきれいで、背景も暗いながらも透明感があって非常に美しい絵なのです。

f0189227_2011529.jpg

この絵に限らず、劉生の作品は微妙なトーンや色彩の扱いのセンスが非常に良くて、全体的に明るく見え、あまり古めかしい感じがしません。作品は小ぶりでも作品の骨格の有り様が明快で、離れて観てもスカッと見えてくるところが良いな、と思いました。

絵画を勉強している人は必見の展覧会だと思います。(Y.O.)

会期 平成23年9月17日(土)〜11月23日(水・祝)
休館日 月曜日(祝日の場合は開館し、翌火曜日)
9時30分〜17時(最終入館:16時30分)
観覧料  一般1,300円 (1,100円)
     高大生900円 (700円)
[PR]

by matsuo-art | 2011-10-15 20:22 | 展覧会  

たけしアートビート ベネチア・ビエンナーレ 束芋 ボルタンスキー

昨日のNHK BSプレミアム「たけしアートビート」はベネチア・ビエンナーレ訪問でした。
2年に1度開催される現代美術の祭典ベネチア・ビエンナーレは、最も歴史のある国際現代美術展です。参加各国のパビリオン展示を中心に実に様々の作品が集まります。

番組では日本館で個展をしている束芋さんのインスタレーションとフランス館代表のクリスチャン・ボルタンスキーを中心に紹介しています。特に巨匠ボルタンスキーの紹介は、パリのアトリエを訪問したり、秘匿のパーマネント作品も紹介していて充実しています。小さい頃は変わった子供で18歳までひとりで外に出る事ができなかったというエピソードを聞いて、逆にそれが旺盛な制作活動をささえているのだなと感じました。

この番組、放送時間がかわったようですね。NHK BSプレミアムで毎週水曜午後9時から、今回の再放送は19日(火)午前0時(18日の月曜深夜)からあります。(n.m.)
[PR]

by matsuo-art | 2011-10-13 13:26 | TV  

スティーブ・ジョブズ氏追悼

「アップル」の創始者のスティーブ・ジョブズ氏が5日に亡くなりました。この8月に「CEOの職務と期待に沿えなくなった」と最高経営責任者を辞任したところでした。
世界初のパソコンをアップル社とともに立ち上げ、初のCG映画「トイ・ストーリー」を作り、iMac、iPod、iPhone、iPadを作り‥‥‥常に新しいビジョンを夢見て追い求め、実現し、世界を変えてきました。

ジョブス氏が2005年にスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチ を、日本語字幕付きで見る事ができます。
「興味と直感に従って行動する事、自分の心を信じて行えば、点と点がつながる。」
世界初のパソコンが美しいフォントを持つに至ったエピソードが、我々を励ましてくれます。

一般的にパソコンと言えばウインドウズなのでしょうが、デザインや美術の世界では昔からアップルのMacが標準でした。美しいフォントを持ち、感覚的に操作できるMacはデザイナーの親愛なるツールでした。「ウインドウズはMacをコピーしただけだから、私がMacに美しいフォントを持ちこまなかったらパソコンにそれらはなかったでしょう」という発言は笑えますが、それはジョークではなく事実であり、ジョブス氏の実現した様々なビジョンを改めてそこに当てはめると、失ったものの大きさを感じずに入られません。

その精神をジョブス氏はこのスピーチで若い人々に託してます。そして、このブログの2010年8月8日でO先生が言及していたホール・アース・カタログについて、スピーチの最後に語られています。

「Stay hungry. Stay foolish.」

NHKのクローズアップ現代でも、哀悼の意を表してジョブズ氏への単独インタビューを公開しています。2001年、今からちょうど10年前に行ったインタビューです。(n.m.)
[PR]

by matsuo-art | 2011-10-06 22:07 | その他