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グッドデザイン賞の携帯電話

夏の講習会期間中にかつての教え子が2名塾に立ち寄って、近況を報告してくれました。

K君は東京造形大学のグラフィックデザインを卒業して数年東京のデザイン会社で働いたのち、今は実家の印刷会社の手伝いをしています。地域をまわって得た顧客の要望から展開した、蜂蜜ビンなどの特産品ラベルのデザインが好評を得ているとのこと。ゆくゆくは家を継いでの社長ですから、経営セミナーなどにも出席していると言っていました。

T君は愛知芸術大学デザインを卒業後、大手家電P社に就職、今は携帯電話のデザインにたずさわっています。学生時代には当研究室の講師として講習会を指導してもらったこともあります。最近デザインした2機種を見せてくれましたが、こちらはどちらもグッドデザイン賞を受賞したとのこと。とても薄いのが特徴のスタイリッシュなデザインです。
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赤いのが2009年、シルバー(外の青色が反射している)のが2010年のグッドデザイン。後者は今も販売されているそうです。
M先生がいろんな角度から写真を撮ってくれたので掲載します。
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その日2人と別れて帰宅の電車に乗ったM先生、向かい席に座ったサラリーマンを見ると、なんと手にしていたのがまさしくT君がデザインした携帯だった、というオマケ付きでした。(n.m.)
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by matsuo-art | 2011-08-29 14:45 | デザイン  

ケイト・ブッシュ「ディレクターズ・カット」

ケイト・ブッシュ9作目のニューアルバムは『センシュアル・ワールド』『レッド・シューズ』という過去2つの作品から選曲・新録した初のセルフ・カヴァー・アルバム。『センシュアル・ワールド』も『レッド・シューズ』もあまり良いアルバムとは思わずほとんど聴き込んでいなかったので、その情報を聞いて逆に、さすがだなあ、と思った。
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私がケイト・ブッシュの作品で好きなのは4作目の『ドリーミング』と5作目の『ハウンズ・オブ・ラブ(愛のかたち)』。この2枚はケイト・ブッシュの最高傑作というのみならずポップミュージック界の金字塔だと思っているので、これらを基準にしてしまった時、『センシュアル・ワールド』も『レッド・シューズ』もかすんだものに映ってしまった(8作目の『エアリアル』も発売当初はかすんでいたが、今は好きなアルバムとして聴いている)。どうやら本人もそう思っていた、ということだろう。
ただ、『センシュアル・ワールド』のタイトル曲「センシュアル・ワールド」だけは、どこまでも漂い続けるような曲構造と「Yes‥」という歌詞の連呼が特徴的で、唯一好きで聴いていた曲だった。今回この曲が「フラワー・オブ・ザ・マウンテン」と改題されて納められているのだが、これが違和感のあるアレンジとなって一曲目に登場するのだ。

まず、最初の鐘の音がどことなく堅い。低いため息で始まるボーカルも、その妖艶さが魔女が語っているかのようなトーンになっていて、不穏な感じさえする。軽やかに漂い広がるような元の曲の印象から大きく隔たっていて、効果的だったドラムも消えている。
(鐘の音のちがいは、ジョン・レノンの「マザー」と「スターティング・オーヴァー」の鐘の音のちがいを連想してしまった。)

もともと「センシュアル・ワールド」はジェイムズ・ジョイスの文学作品『ユリシーズ』の一節をそのまま歌詞として引用して創られたものだったらしい。当時ジョイス財団から使用許可が降りなかったのでケイトが歌詞を書きかえていたのを、今回許諾が降りて、もともとの歌詞で実現したという。句読点なしで延々とセンシュアルな語りが続くという内容のようなのだが、そうなるとこの印象の違いは、ケイトのジョイス作品に対する解釈の当時との違い、あるいはもう一つの解釈、と取ってよいわけで、最初はなんでこのような内容にしたのだろうといぶかっていたものの、無駄な音をはぎ取りより近い地層に降りて来たかのようなボーカルを何回も聴いていると、最初の違和感は違和感として受け入れつつ、その世界にもだんだんとはまり込んでしまった。

一方、『レッド・シューズ』からのラスト曲「ラバーバンド・ガール」は、キャッチーな良い曲なのだろうけれど音がなあ、と思っていた曲だったのだが、このニューアレンジは手放しで歓迎できる出来で、すばらしい。ストレートに前進していくドラムに、こちらは一転してキュートでボーイッシュなボーカルが乗った、どこか60年代ロックを思わすアレンジ。
他にも大仰な盛り上がりを排したバラードのアレンジなど、何度も聴き返すことができるアルバムに仕上がっている。元はシャリシャリと耳障りな感じだった音質も、まろやかで落ち着いたものになっている。

もう2度と作る事はできないかもしれない狂気すれすれの豊穣世界『ドリーミング〜ハウンズ・オブ・ラブ』を基準にするのはフェアではないな、と『エアリアル』を受け入れた時点で思うようになった私としては、ケイト・ブッシュが完全復活した、と感じる今日この頃です。(n.m.)
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by matsuo-art | 2011-08-23 22:38 | 音楽  

百獣の楽園ー美術にすむ動物たち/京都国立博物館

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京都国立博物館で開催中の「百獣の楽園ー美術にすむ動物たち」展に行ってきました。京博のコレクションの中から動物をテーマにした作品を選んで、「犬」、「牛」、「馬」、「獅子」、「虫」、「鹿」、「象」・・・等のようにテーマ別に集めて展示するという楽しい企画です。夏休みということもあって子供連れの家族やカップルなども多く、会場はとても賑わっていました。

古くは縄文式土器、漢代の青銅器、古墳時代の埴輪、唐三彩から、幕末・明治の河鍋暁斎や富岡鉄斎まで、非常に幅広い年代とジャンルからのチョイスが楽しいです。また、若冲の「群鶏図」や「百犬図」、狩野元信「四季花鳥図」、俵屋宗達の「牛図」、尾形光琳「竹虎図」、「十二類絵巻」、「華厳宗祖師絵伝」などといった非常に有名な作品もあれば、このような企画でもなければなかなか目に出来ないような作品と出会う楽しさもあります。

個人的には、今回の展覧会の作品中、最もびっくりしたのがこの長沢芦雪の「朝顔に蛙図襖」。
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ほぼ朝顔の蔓の線と細い笹の線だけで斬新な空間を創出していて、その独特な空間の質と表現の大胆さ、そして完璧と言っていいようなバランス感覚には見ていてゾクゾクさせられました。
「広い襖の画面に蔓と笹の線が引かれている」というよりも、線によって分割されている空間の質が明らかに違っており、そうした質の異なる空間が蔓と笹の線を境に緊張感を持って拮抗しているのです。
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あたかもユーラシアプレートと、南海プレートと、太平洋プレートが(蔓と笹の線を境に)せめぎ合っているような感じといえば伝わるでしょうか?
また、濃い墨色の朝顔の花や笹の葉の強弱が空間にリズムや震幅をもたらしているし、蛙の位置や形状も必然性を持っているように見えます。非常にシンプルな画面ながら細部まで綿密に計算されていて、過不足なく表現され切っているすごい作品だと思いました。

狩野元信の「四季花鳥図」も、花鳥に関しては宋元画に通じるような丁寧な観察と格調の高い描写に打たれました。
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後、そうした芸術的な感銘とは違いますが、個人的にヒットだったのはこれ。
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室町時代の画家、雪村周継の「猿蟹図」。展覧会場のこの絵についての解説には「小猿たちが一匹の蟹を捕まえて戯れる場面を描いたものだが、これほど愛らしい雰囲気を持つ猿はほかにない」とあります。う〜ん???僕にはか弱い蟹に殴りかかるいじめっ子(まるでジャイアン)みたいな猿にしか見えないんですが・・・。
さらには、河鍋暁斎の「惺々狂斎画帖」の中の「化け猫」の図。「ニャ」とばかりに出てくる化け猫の視線と吉本新喜劇ばりにぶっ飛ぶ旅人の姿が笑ける。
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是非、展覧会場で自分のお気に入りを見つけてみてください。(Y.O.)

会期:7月16日(土)〜8月28日(日)
休館日:月曜日
開館時間:9:30〜18:00(毎週金曜日は20:00まで)
観覧料:一般1000円  大学・高校生700円  中学生以下無料
(キャンパスメンバーズ会員校の学生証を提示すると無料になります。)
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by matsuo-art | 2011-08-15 14:23  

デザイン事務所 ツムラグラフィーク(Tsumura grafik)

少し前のことになりますが、大阪の画廊回りに行った折にツムラグラフィーク(Tsumura grafik) に寄ってきたので紹介します。ツムラグラフィークはデザイナー津村正二氏の事務所です。当研究室の年間パンフレットは創設以来ずっとツムラグラフィークにお願いしています。現在の場所に引っ越してから初めて寄らせてもらいましたが、靭公園に隣接したビルの4階にあって、窓から公園に茂る緑が見下ろせる気持ちの良いところでした。

一口にビジュアルデザインと言っても様々な仕事があるわけですが、津村氏は美術関係の図録やポスターを多く手がけています。
これはその一つ、2007年に京都国立美術館で開催された狩野永徳展の図録。永徳の今に残る作品を網羅した充実の展覧会でしたが、それをまとめた貴重で分厚い一冊です。
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こちらの美術家の松井智恵さんと評論家の中村敬治さんによる美しい本(DVD付)も、津村氏のデザインです。
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たくさん手がけた展覧会のポスター、その一部も見せてもらいました。当研究室の教室にもいつも開催中の展覧会チラシが置いてありますが、かつて置いてあったあのチラシやこのチラシも実は津村氏がデザインしていた、と知りました。
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こちらも津村氏のデザイン。相国寺承天閣美術館で開催中の浮世絵展です。
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他にも津村氏は関西の情報誌「ミーツ・リージョナル(Meets Regional)」の表紙とレイアウト(一部)も手がけています。「ずっとやっていますよ」と聞いたので家にある古いMeetsを探し出してみてみたら、確かにデザイン津村正二、と書いてあります。
こちらは今、書店で並んでいる津村氏アートディレクションのMeets別冊「神戸本」です(三宮地下の本屋で買ったら表紙と同じイラストのトートバックがもらえた)。
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私も知らない津村氏デザインのものが、他にもいろいろありそうです。(n.m.)
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by matsuo-art | 2011-08-04 23:07 | デザイン  

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA「総合基礎実技展  ~とらえる~」

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAで開催中の「総合基礎実技展  ~とらえる~」へ行ってきました。
「総合基礎」は京都市立芸術大学美術学部に入学した新入生全員が行う4ヶ月間の実技カリキュラムで、この大学を特徴付けている授業でもあります。デザイン、美術、工芸の各専攻の枠を取り払った課題に、時にはチームを組みながら取り組みます。”創造の世界で広い視野と柔軟で強靱な展開力をもって臨むための基礎教育” と位置づけたこの実習を通過してから、京芸では各専攻に分かれていくのです。
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ギャラリー1階には第1~4課題からの選抜作品を、2階ギャラリーには第5課題「歩く作法」についての1回生全員136名の作品が展示してありました。
選抜作品には当研究室からこの間入学したばかりの学生の作品もいくつか選ばれていて、それらを見ていると、この間まで受験生だったのになあ、と妙な感慨にもひたります。

課題の内容が面白く、ペンによる実物大(と思われる)の樹木のドローイング、立版古(たてばんこ)、チリモンのドローイング、グループ制作による巨大なオブジェや装置など、やる側にも見る側にもアピールできる内容です。地域をフィールドワークして協同制作した2階の作品は、ギャラリーでの展示をはじめから設定されているという、うらやましい条件です。翻って私が1回生だった時の総合基礎は受験の延長みたいな課題で面白みがなかったことを記憶していますが、それでも最後にグループ制作と発表(学内でのコンクール形式)がやはりあって、そこは充実した内容でした。我々の頃は前期の最後に発表があったので夏休み中にも制作をしていました。8mm映画を作ったグループもあれば、空間体験型オブジェを作ったグループもありました。1位になったグループの発表は、野外に3、4段の高い足場を組み、光と音のショーを夜空の下に演出するという壮大なものでした。その時に巨大なPAシステムを調達してきた同級生は、今ではダムタイプの舞台装置や音響の演出を担っています。

こうして授業の成果を外部に公開していくことは授業を受ける学生にとってはもちろん、教育内容の鮮度を保ちレベルを上げていくという意味で、教える側にも有意義なことだと感じました。(n.m.)

 ■2011年度  京都市立芸術大学  総合基礎実技展  ~とらえる~
 会期:2011年7月14日(水)~8月7日(日) 月曜休館
 開館時間:11:00~19:00(入館は18:45まで)
 会場:京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA1、@KCUA2(アクア1、アクア2)
 住所:京都市中京区堀川御池北東角(京都市立京都堀川音楽高等学校移転地内)
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by matsuo-art | 2011-08-01 12:56 | 展覧会