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ニロタカ

研究室の卒業生が立ち寄ってくれました。彼は大阪芸術大学のコミュニケーションデザイン学科を卒業してホームページ制作会社で働いていますが、半年ほど前からビジュアルアーティストとしての活動を始めたとのこと。アーティスト名は「ニロタカ」です。
現在、「プルーフ」というフリーペーパーにインタビューが載っていて、表紙にも彼の絵が使われています。
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このフリーペーパー、ヴィレッジヴァンガードなどに置いてあるそうですが、大阪周辺に限っていて、神戸には置いていないそうです。大阪のヴィレッジヴァンガードに立ち寄った際には、手に取ってみてください。

すでに東京と大阪のクラブでライブペインティングも行ったそうです。インディーズのCDジャケットも制作していて、今後の活躍に期待したいですね。今は活動を始めたばかりで、まだ作品数は少ないようなので、どんどん描いていってください。(n.m.)
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by matsuo-art | 2010-05-29 22:48 | 美術  

北野武「アウトレイジ」 カンヌ映画祭

北野武氏の新作映画「アウトレイジ」がカンヌ映画祭コンペティション部門に出品されています。氏の原点でもあるヤクザ映画へ回帰したこの作品、賞がとれれば良いと思うのですが、公式上映後の”エンターテイメントな映画、激しい暴力描写”といった一般評を聞くと、むずかしいのかなあ、とも思います。
賞を取るには大衆受けするよりも批評家受けする部分が必要でしょうし、ベネチアで金獅子賞を受賞した「HANA-BI」のように、暴力の中にも人間の悲哀を描く部分がどれくらいあるか、といったところが分かれ目でしょうか。

北野氏は、存在感のある役者さんを起用する、あるいは俳優に存在感を与えるのがうまい監督ですが、これまでの映画でも、大杉蓮氏、寺島進氏など北野組常連となった2人はもとより、豊川悦司氏(「3-4X10月」)、渡哲也氏(「BROTHER」)などは、ほんの一瞬登場しただけなのに存在感抜群の、とても印象深いあり方でした。

そんな北野映画の役者さんの中で、特に私が好きなのは、ガダルカナル・タカ氏です。

最初に魅了されたのは、「3-4X10月」での、元やくざの草野球コーチ役。話をつけに組事務所で静かに立つ姿は、日本映画の新しいリアリティの扉をたたいた、ぞくぞくするようなシーンです。「3-4X10月」は、私が一番好きな北野映画でもあります。
次に「みんな〜やってるか!」の飛行機の操縦士。その馬鹿げた姿は底抜けに明るく、見ていてうれしくなります。「みんな〜やってるか!」は作品としてはまとまりのない失敗作かもしれませんが、後半部分を撮り足して再編集すれば、かなり面白い映画になるのでは?とも思っています。
そして「座頭市」。ラストシーンの、あのタップダンスの開放感には、タカさんの楽しそうな笑顔が欠かせません。

今回の「アウトレイジ」俳優陣も期待が持てますが、特に石橋蓮司氏の起用はうれしいところです。74年のATG映画「竜馬暗殺」での中岡慎太郎役の石橋氏が私は大好きで、ひさびさにあのような存在感が出ているのではないかと期待しています。

今年はポンピドゥーセンターでの上映会やカルティエ現代美術財団での個展と、フランスでキタノイヤーの追い風が吹いているだけに、賞が取れるかどうか、発表は現地時間の23日です。(n.m.)
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by matsuo-art | 2010-05-20 00:58 | 映画  

大竹伸朗 直島銭湯「I♥湯(アイラブユ)」

「フリップ&イーノ」の曲が流れる銭湯。そんな作品が瀬戸内海の直島に出現しました。

この銭湯の存在を知ったのは、たまたまそのホームページを見つけたから。直島銭湯「I♥湯(アイラブユ)」、作者は美術家の大竹伸朗氏。
これを見つけたときは、やられた!と思いました。そして、面白い作品に違いない、と思ったのです。

「やられた!」というのは、銭湯の壁画というものに前々から興味があったからです。実用的な絵画の場所としての銭湯に魅力がありましたし、そこで描かれている富士山の絵などの、ちょっとチープな感じも好きでした。以前、自身の個展で壁一面にタイルを張った上に油彩でペインティングを施したことがあるのですが、その時の発想のもとは、銭湯内で撮影されたサディスティック・ミカ・バンドのLPジャケット写真でした。そこに写っているタイルに描かれた鯉の絵に触発されたのです。

一方で、自ら「コンセプトはない」とおっしゃる大竹伸朗氏の造形性は、純粋な美術としてのタブローや彫刻として提示すると弱くなると私は思っていました。スクラックブックなどの、そこから逸脱した形式になったときに生き生きすると思っていたので、銭湯という実用性のある場所、しかも大衆的な猥雑さもあるこの場所は、まさしく大竹氏のフィールドだと感じたのです。

そして見つけたのが美術手帖2009年12月号掲載の浅田彰氏による作品評。そこには ”フリップ&イーノの環境音楽(「Evening Star」)”がこの銭湯で流れていると書いてあるではありませんか!

フリップ&イーノは、キング・クリムゾンのギタリスト、ロバート・フリップと元ロキシーミュージックのブライアン・イーノというロック界の奇才2人が組んだユニットです。その音楽は、イーノによる音のループに浮遊感のあるフリップのギターがかぶさるという実験的なもので、イーノはその後「アンビエントミュージック」によって環境音楽へのアプローチを展開させました。今では音楽の1ジャンルとなっている環境音楽は、この2人の実験から始まったとも言えます(サティによる家具の音楽という試みもそれ以前にありますが)。
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受験生の頃、私が通っていた梅田の画塾近くの商店街に「LPコーナー」という輸入レコード屋があり、そこでフリップ&イーノの2枚のアルバム「ノー・プッシーフッティング」と「イブニング・スター」を買いました。ボール紙による粗雑な作りのアメリカ盤ではなく、紙は薄いけれど丁寧な作りのイギリス盤のこの2枚は、美しいジャケットワークとともに私のちょっとした宝物でした。
でも実験的であるがゆえに、その音の大半は耳障りなものか退屈なものなのですが、どちらもA面だけは何度も聴くことができる曲であり、特に「イブニング・スター」A面のタイトル曲は、ディストーションのかかったフリップのギターが野太くも美しい名曲です。

5月3日の深夜に放映された「I♥湯」制作過程に密着したTVドキュメンタリー番組のワンシーン、完成間際の銭湯内で語る大竹氏のバックに数秒ですが「イブニング・スター」が鳴っているのを聴いて、思わず鳥肌が立ちました。浅田氏は作品評の冒頭、”21世紀の全体芸術が出現した”と書いていますが、私としても ”銭湯でイブニング・スターが聴けるなんて!これが21世紀か!”といった感慨です。

雑多な無秩序感の中にも透明な美しさをもった銭湯の内部。ドキュメンタリー番組では、さらに詳しいその様子、成り立ちと細部が明らかにされ(古い銭湯を改装したのだろうと思っていたら、建築物を一から大竹氏が設計したこと、激しいブラッシュワークのカラフルな天井ガラス絵が、必要に迫られて急遽発想されたものであること、意味不明の青い文字の言葉や絵が描かれた愉快なタイルたち、外壁に職人さんに描いてもらった富士山、などなど)、実際、ずっとイブニング・スターが鳴っているのかどうかは定かではありませんが、いずれにせよ、早く一度行ってみたいものだ、と思っています。(n.m.)
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by matsuo-art | 2010-05-13 22:38 | 美術  

京都国立博物館「長谷川等伯展」

京都国立博物館「長谷川等伯展」に行ってきました。

私もO先生のように展覧会が始まってすぐに行くつもりだったのですが、実物を見たいと前々から思っていた「枯木猿猴図(こぼくえんこうず)」の展示が展覧会後期だと言うことを知り、この日になったのです。それでも最初は後期展示初日の4月27日(火)に行く予定で仕事を休ませてもらったのですが、京博ホームページを見ると、その日は雨で寒い天候だというのに昼12時の段階で入場2時間待ち。「只今の混雑状況」とにらめっこしながら2時を過ぎても待ち時間が減らないのを見て、行くのを諦めました。どうせ外で待たされるのなら天気の良い日にしようと思ったのです。
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そして当初は絶対に避けようと思っていたGW中のこの日の拝観となったのですが、出発前の昼過ぎにホームページを見るとあまり混んでない様子。期待しながら京都まで行って、京阪七条駅を降りてすぐの交差点では、係のお兄さんが「只今10分待ち」のパネルを掲げています。京博入り口に夕方4時に着くと、なんと、まったく待たずに入場できました。ラッキー!
GW中は混雑必至と予想して皆が避けたのか、他の行楽地へ行っているのか。直前の28日でも3時間近く待ち状態になっていたのが、29日(祝)は逆に少なくなっていました。GW残りの3日間も案外空いているのかもしれません。

とは言っても入場したらやはり中は混んでいるわけで、残念ながら気持ちよく鑑賞できる空間ではありません。人混みで大きな作品は全体を一度に視野におさめるのは難しいし、館内の照明の暗さに慣れるのにも時間がかかりました。
まずお目当ての作品から鑑賞しようと考え、まっすぐ「枯木猿猴図」のもとへ。第一印象は「図版で見ていたのと同じ!」という、あまり感動的ではないものでした。しかし、思いっきり勢いよく描いた枯木の枝の、その配置と角度はやはり見事です。右幅の中央から左下に伸びる枝の、妙に生々しい線の逸脱感を実際に確かめることができました。全体として荒々しい枯木と丁寧な描写の猿が調和しているのも不思議です。
私は右幅に興味があったので最初はずっと右幅を観察していたのですが、左幅も実物を観察していると、上部右の太い線の幹や、猿の足や手、枝との接点の様子など、随所に見所を感じて、右幅と同じように好きになりました。
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そして「松林図屏風」。松林図を見るのは今回で2度目ですが、前回見た記憶と違っていたのは、まずその大きさ。大きい、と思いました。記憶の中の松は一回り小さく、大きく感じたのは意外でした。そして近くで見たときの表現の激しさについてですが、これは思っていたよりもおとなしいものに映りました。最初に見た時に印象的だった部分が頭の中で大きくなっていたのでしょうね、記憶では墨の濃いところは物理的に墨がもっとのっていて、筆跡も、もっと激しいもの、になっていたようです。

とは言えこの名品に再度魅了されたのは言うまでもありません。一番墨が濃くのっているところと白いところ、その間の薄墨と、階調の絶妙さを味わってきました。今回は特に一番左の薄い松に感心して眺めていました。

信春時代の金碧画「花鳥図屏風」を見られたのも収穫でした。枝振りで空間のリズムをつくる作風をすでに見ることができます。その他「竹虎図屏風」の虎や「檜原図屏風」の檜の表現、端整に描いている人物の顔、緻密な初期仏画、没する1年半前(70歳頃)で描いた巨大な絵馬、など興味を持って観ました。

こちらは会場を出て京博敷地内で撮った水墨画のような松(?)です。
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全体として等伯の多様さと画力を堪能できた展覧会でした。前期のみ展示だった「松に鴉・柳に白鷺図屏風」など、今回見られなかった晩年の水墨画も見たかったなあと、しっかりまとめてあってお買い得の図録を見ながら思いました。(n.m.)
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by matsuo-art | 2010-05-02 22:53 | 展覧会