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『三人展』

こちらの卒業生で4月から大学3年生になる長井千佳子さんの展覧会に行って来ました。
展覧会名は『三人展』。
場所は西宮市夙川のGALLERY&Cafe World Times。
会期は2010年3月16日−3月21日、でした。

三人展というタイトルはその名の通り3名のグループ展ですが、長井さんと彼女のご祖父母というほほえましい展覧会でした。
ご本人は油絵とドローイング、ご祖父は写真、ご祖母は日本画の出品です。

今回長井さんの作品を初めて見せてもらいました。
展示されている作品は「顔」を描いた小品と、ボール紙の上にドローイングしそれをコラージュしたものです。
大学で油絵を専攻してからずっと「顔」をテーマに制作しているそうです。特に最近は「食べている顔」をテーマの中心に置いているとのことで、展示されていたドローイングでもほとんどの人が何かを食べています。
モデルは友人達をメインに、渋い味わいのある方々も登場し、長井さんの日常の視点がかいま見えるようで面白かったです。ドローイングの中に柔らかで動きのある線がちらほらと見え、そういう部分が大きな作品を描くときに生きてくることを楽しみにしています。

ご祖父の作品は春の季節にあった桜をモチーフに撮られた写真で、桜の名所夙川というロケーションにぴったりと合っていました。
ご祖母はとてもていねいに描き込まれた人物画でした。京都市立芸術大学の女性初の卒業生だそうです。作品ファイルには幼い頃の長井さんがモデルになっている絵もありました。長井さんは絵に近い場所で育ってこられたんだなあと、優しい風合いの絵を見ながらしみじみと思いました。


長井さんのドローイングを紹介します。

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(y.m)
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by matsuo-art | 2010-03-31 17:51  

3Dアバターと龍馬伝

もう1ヶ月以上前のことですが、3D映画「アバター」を観ました。

以前に天保山IMAXシアターで恐竜発掘に関する3D映像作品を観ていて、その体験で3D映画の可能性を感じていました。モササウルスのような海竜が泳ぐCGシーンから始まるその映像は、いきなり観る者を古代の海へと立体映像で引きづり込むのです。博物館の実写シーンでは、展示してある大きな首長竜の骨格化石をカメラがなめ回すように上昇しながら、実際に入ることができない骨格の内側も立体視で見せてくれます。卵から孵る恐竜や古代の羽虫が目の前にいるかのように描かれていました。ですから3Dアバターは映画館に観に行く価値があるだろうと思ったのです。
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アバターの世界には不思議な動植物が生息しています。高校生の頃好きだったイラストレーター、ロジャー・ディーンの世界が、まさしく現実になったかのような映像です。さすがに体毛がふさふさあるようなクリーチャーはCGでは苦手らしく出てきませんが、それでもこの不思議で複雑なジャングルの世界をリアルに描き出すCGと3Dの技術には驚きました。

この映画は3Dだからといってモノが飛び出すなどのこれ見よがしの演出はあまりなく、”奥行き”という3次元の世界を見せてくれます。ただ、じっくりとその奥行きのある世界の細部を見たいのに、それを拒んでいるかのように1つ1つのカットが短いのと、常に移動していて落ち着きのないカメラワークは気になりました。カット割りやカメラワークは従来のアドベンチャー映画と同じなのです。2Dバージョンもあるのだから仕方ないかもしれませんが、3Dゆえの落ち着いたカット割りを考えてよいと思いました。

それとつい最近知ったのですが、アバターの3D上映には映画館によって4つの方式があるようです。私が観たOSシネマズ ミント神戸は、どうやらXpanD方式で、先のIMAXシアターで観た作品に比べて、画面が暗い、立体視も若干弱い、メガネが汚れている、と私が感じたのは間違いではなかったようです。方式としてはIMAX3D方式の評判がよく、視野も明るく、細部もよく見えるようです(今からミント神戸へ観に行く人には、メガネ拭き持参で吹き替え3Dをお薦めします)。

内容的には「異星の土地と文化を舞台にした典型的なストーリー」と監督自身が述べているように”ファンタジーでくるんだ侵略戦争もの”です。しかし、このような侵略戦争のストーリーが”典型的”ということ、つまり歴史的にも繰り返されているということには考えさせられます。アバターを観たその日、家に帰ってNHKドラマ「龍馬伝」を観ながら、最近読んだ杉本博司氏の本に書かれていた2つの視点を思い出しました。アバターの惑星「パンドラ」が幕末の日本と重なります。

1つは、幕末に将軍慶喜が徳川体制の維持のみを考えてフランスからの武器供給の申し出を受けていたら、日本はフランスに侵略されていたかもしれない、と言うことです。あの混乱の中で、日本は結果的に”侵略される戦争”を回避できました(ただし、吉田松陰の弟子たちがその後侵略する側にまわったという視点もある)。
もう一つはアメリカ総領事ハリスの通訳であったヒュースケンの悲劇です。当時日本に駐在した外国人の中でも一番の親日家であり日本の自然にも魅了されていたヒュースケンが、皮肉にも攘夷派の刺客の犠牲になったのです。文化の相違と利害関係の中で生まれた悲劇を、アバターも描いています。

アバターと同じように落ち着きのないカメラワークの龍馬伝を観ながら、そのようなことについて考えたのでした。(n.m.)
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by matsuo-art | 2010-03-27 01:16 | 映画  

国立国際美術館「絵画の庭 ゼロ年代日本の地平から」展

国立国際美術館「絵画の庭 ゼロ年代日本の地平から」展に行ってきました。

同館が中之島に移転して5年経つのを記念して、「日本の若い世代を中心に活発な動きが見られる、この10年余りの新しい具象的な絵画に焦点を当てた」展覧会です。作家28名の近作、新作合わせて約200点を、作家ごとにブースで区切って紹介しています。

油彩などの絵画表現をめざしている、あるいは現代美術に興味のある受験生は是非行ってみてください。ある程度共通した傾向はあるものの、それぞれ違った表現、内容をもった作品がたくさん並んでいますから、その中から自分の興味、嗜好を見つけ出すことができるかもしれません。4月4日(日)までです。

奈良美智氏の描く少女の眼がラメで光っている、とか、会田誠氏の、細密に描いた小品の横に下から見上げる大きな作品がある配置の妙、など、実際に見てわかる部分も多々あると思います。
ただし、作品の数が多いので、すべての作品を丁寧に観ようとすると疲れてしまうかもしれません。

加藤泉氏の不思議な存在感の立体、加藤美佳氏の表面を作り上げる質の高さ、杉戸洋氏の大きくて素朴な質感の絵画、青木陵子氏のドローイングを細かく描いていく心持ち、坂本夏子氏の偏執的なタイルや波の描写、などを興味を持って観ました。(n.m.)
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by matsuo-art | 2010-03-22 16:44 | 展覧会  

山下裕二「日本美術の二十世紀」

NHK日曜美術館「長谷川等伯特集」の再放送が今日あると、先週日曜日のこのブログに書きましたが、他の番組が優先されてありませんでした。民放とちがってたいてい再放送してくれるのがNHKのよいところですが、たまにこういうこともあります。また再放送してくれるでしょうか。
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山下裕二著「日本美術の二十世紀」(晶文社)を読みました。
山下裕二氏は日本美術史の専門家ですが現代美術家との交流もあり、若冲、廬雪、雪村、白隠などの作品について一般にもわかりやすい言葉で書いて、近年広く紹介した功績があります。この本では、「一九五六年の雪舟」「一九七〇年の伊藤若冲」「一九九五年の源頼朝像」などの見出しにあるように、ある作品、作家を取りあげて、その評価がどのような変遷をたどって来たか、1つの時期をポイントにして書いています。美術作品の専門家によるその時々の評価や美術史家の仕事の裏側を書いたエッセイであり、こうした文章も、もうひとつの美術史として貴重だと思いました。

「一九五〇年の長谷川等伯」という一文では、戦前「松林図」は、現在のように第一級の評価が下されていなかったということが書かれています。それでは戦後どのような経緯で今の評価に安定したのか、というところまでは研究書ではないゆえ、それほど詳細に書かれていないのは残念です。

でも「一九三九年の雪村」では、ある時期に雪村の小品がやたらと持ち上げられたことがあり、ベルリンの日本美術展にこの作品が出品された時、ヒットラーが賞賛したことがその理由であると書かれていて、そんなこともあったのかと興味深く読みました。山下氏自身、当時のその流れの中で美術全集を編纂してしまったという反省があってのことでしょう、特に本文で取り扱っているわけではない雪村の秀作「呂洞賓図(りょどうひんず )」がこの本の表紙になっているのも面白いところです。(n.m.)
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by matsuo-art | 2010-03-14 22:21 |  

井上雄彦 最後のマンガ展 重版[大阪版]

井上雄彦 最後のマンガ展 重版[大阪版]へ行ってきました。
私はバガボンドもスラムダンクも読んだことがありません。でも東京上野の森で最初にこの展覧会が始まったときから井上氏の描く大きな墨絵は気になっていて、実物を観たいと思っていたのです。
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会期終了間際で当日券に限りがあるということでチケットを2日前に予約、しかも1時間ごとの時間指定券ということだったので、ややこしいなあ、と思いながら買って行ったのですが、行ってみてわかりました。
時間指定であるにもかかわらず入館に15分ほど待たされたのですが、中に入ってみると、そんなに混雑している訳ではないのです。それなのにエレベーターにたった2、3人しか乗せずに間をおいて誘導しているのは、展示内容がストーリー仕立てになっていて、それを鑑賞者にゆっくりと味わってもらいたいという企画者側の意図だったのですね。実際、前半こそ鑑賞者の列がなかなか進まないものの、後半はかなりゆったりと鑑賞できて、最後の部屋は、ほぼ一人で味わうことができました。
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その最後の部屋と、1つ前の部屋がなかなか感動的で、私は最後にそんな演劇的なしかけ(?)があるとは思ってもみなかったので、ちょっとやられてしまいました。
いつも展覧会は最後まで観たあと一度引き返して、もう一度良かった作品だけ見直してから会場を後にするのですが、最後の部屋のあり方に思いがけなく心が動いて、その余韻のまま会場を後にしました。私の鑑賞スタイルを変えさせてしまうほどに、よく考えられた展示空間、そして、力のある作品群でした。
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これまた事前リサーチ不足で、私は漫画の原画にいくつかの墨絵をプラスした展覧会だと思っていたのですが、どうやら全作品、展覧会用の書き下ろしだったのですね。それはすごい、と思いました。関係者のブログによると、大阪展では「2mを超える大作が4点も描きなおされ、他にも中サイズのパネルケント紙作品、極小サイズの作品と新作目白押し」ということだったそうです。図録との印象の違いから、あれは描き直したのかな、とか、あれは新作だったのかな、とか思っていますが、正確な情報を知りたいですね。
図録の値段が高く、観に行ったけど買えなかった、という生徒もいました。図録、しばらく教室においていますので、皆さん見てください。(n.m.)
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by matsuo-art | 2010-03-12 22:27 | 展覧会  

没後400年 長谷川等伯展、近づく。

今日の日曜美術館(NHK教育)は長谷川等伯の特集でした。来週日曜日の8時から再放送があるはずですから、観なかった人は是非観て下さい。
現在、東京国立博物館で没後400年特別展「長谷川等伯」を開催していて、4月10日からは、いよいよ京都国立博物館で開催されます(5月9日まで)。会期がたった一ヶ月しかなく、春の観光シーズン真っただ中ということで、大混雑必至の展覧会です。それを思うと若干憂鬱ですが、等伯の名作が一堂に会するまたとない機会ですから、逃すわけにはいきません。

今日の番組ではここで少し紹介した現代美術家の杉本博司氏も登場して”松林図屏風”の魅力を語っていました。私が”松林図”の実物を見たのはいつの頃だったでしょうか。言われているようにこの作品では、中心のない大きな余白と薄墨による霞がかった松の表現による、静かで繊細な印象が画面を支配していますが、黒々と激しく描いた松の部分には本当にしっかりと墨がのっていて、実物を見ると、その表現の振幅の大きさにも打たれるのです。
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この絵の”余白”が注目されるのは当然なのですが、しかしその余白を生かしているのは”描かれた松”なのであって、やはりその形態、あり方が、自然の生き物のように充足していて、私には目の前に物質として松が存在しているかのように思えました。例えて言えば、松の彫刻が目の前にあるかのように感じたのを覚えています。

間違いなく日本を代表する美術作品だと思いますが、まだ1度しか見た事がないので、もう一度、さらに何度か見て、自分で確かめていきたい作品です。

雑誌の芸術新潮も、今月号は等伯の特集です。(n.m.)
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by matsuo-art | 2010-03-07 22:59 | 展覧会  

卒業制作展

受験シーズンまっただ中ですが、この時期は各美術系大学の卒業制作展のシーズンでもあります。研究室の方にも、この春に美大を卒業する研究室OBからいくつか案内状が来ていました。多忙な時期でもあるので全ての卒展には行けていないのですが、それでも今年も何校かの卒展に行ってきました。

卒制の作品は大学での勉強の集大成。美術館いっぱいに展示された作品群のなかから研究室OBの作品を見つけ出すのはけっこう大変で、もしかしたら見逃してしまった作品もあるかもしれません。うまく見つけることが出来たOBの作品は研究室時代に描いていた絵の感じを思い出しながら、その成長や変化を楽しみながら見せてもらっています。

何人かのOBからはこの春からの進路について伺っていますが、他のOBの皆さんも機会があれば近況などお知らせくだされば嬉しいです。(Y.O.)
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by matsuo-art | 2010-03-01 23:00 | 展覧会