濱口竜介監督「ドライブ・マイ・カー」アカデミー賞受賞
濱口竜介監督の映画「ドライブ・マイ・カー」が94回米アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞しました。すでに多くの賞を受賞し海外でも認められていた作品ですが、アカデミー賞にノミネートされて受賞するということは、また格別な感じがあります。
YouTubeでは監督のインタビューや出演者たちの舞台挨拶など、たくさんの動画を見ることができます。私もこの映画を見てからその成り立ちに興味を持って、いろいろと動画を見ていました。今はそのようにして作品に関わる人たちの生の言葉にたくさん接することができる、よいご時世です。中でも、”神戸スタディーズ #8「まちで映画が生まれる時」”は、濱口監督と神戸との繋がりを知る上で大変興味深いアーカイブでした。
濱口監督は、デザイン・クリエイティブセンター神戸(愛称:KIITO/キイト)のアーティスト・イン・レジデンスで神戸に長期滞在し、2015年に映画「ハッピーアワー」を撮っています。その経緯や、監督と神戸の人々との繋がり、交流について詳しく語られていて、この国際的な監督のメソッドが、神戸の地でも大きく形作られていたことがわかります。
「ドライブ・マイ・カー」では、西島秀俊さん演じる舞台演出家が俳優たちにセリフを練習させるときに、あえて感情を込めない形で何度も本読みをさせます。そうした方法は一般的なのかと思いましたがそうではなく、この特殊な練習方法は、まさしく濱口監督が「ドライブ・マイ・カー」を作るにあたって西島さんはじめ俳優さんたちに行った方法だということ。このように、この作品では現実の演技と映画の中の演技、さらに劇中の演劇が交錯する感覚があります。もともと村上春樹の小説が原作であることもあって、小説、映画、演劇というジャンルの交錯が起こります。映画の現実に浸っていると、ふとセリフが、何か小説のような、演劇のようなセリフへと飛躍する。それもこの映画の魅力だと思います。
ちなみに「ハッピーアワー」は5時間17分というとても長い上映時間の作品です。私はたまたま点けたテレビのBSで上映していたそのシーンに見とれましたが(移動する大きな船の甲板に女性が立っているシーンだったと記憶する)、その後を最後まで見続けることはできませんでした。機会があれば今度は全編見てみたいと思います。(n.m.)
by matsuo-art | 2022-03-29 10:59 | 映画