「日本画伝統表現 絹本画に親しむ」京都市立芸術大学サマーアートスクール

8月6日~8日の3日間、母校の京都市立芸術大学サマーアートスクール「日本画伝統表現 絹本画に親しむ」に参加してきました。
若冲や芦雪など、私が好きな絵師は絹本画(けんぽんが)も多く描いているので、以前から絹に描く技法には興味を持っていました。この講座では絹本画の基本と素材について学び、若冲の「動植綵絵」の模写を通して「ぼかし」と「裏彩色」の技法を体験することができました。
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裏彩色とは、絹という薄くて透けて見える基底材独特の技法で、表から何層も重ね塗りが出来ない代わりに、裏から彩色する方法です。それによって描写や色味を複雑にするだけでなく、保存の効果もあると言います。
実習では最初に軽く練習をした後、用意してもらった4つの図版から1つを選び、木枠に張ったドーサ引きの絹に模写しました。私は比較的簡単で図像的にも興味がある「ふぐ」を選びましたが、一番難しい「鶏」は3日間で完成させるのは困難と言われたにもかかわらず、結構多くの受講生が選んでいました。

これは指導していただいた宇野先生によるお手本です。
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こちらがその裏彩色の様子。
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この講座は教員免許状更新講習にも指定されて、教員をされている方も多く受講していたようです。当研究室のYM先生も教員免許状更新のために受講していましたし、日本画の同期生のSさん、先輩のTさんも受講されていました。
私は油画出身なので、学生の時に独学で日本画の絵の具を使った事はあるものの、ちゃんと教わった事はありません。顔料を膠で溶く加減など基本的な事を知らないので戸惑ったのですが、この講座の参加者は皆さん承知のようで、各自どんどん進めていきます。
ただ、胡粉の溶き方については、修復の現場の方法は一般的な日本画の方法よりさらに繊細であるようです(この講座は日本画の主催ではなく保存修復の主催です)。宇野先生によるデモンストレーションでは、皆さん集まって熱心に習得していました。

「ふぐ」の模写では最初に和紙でマスキングをします。若冲も実際にマスキングをしていた、という事実を知ることができたのは収穫でした(若冲は和紙を使わずにのりだけでもやっていたらしい)。のりで紙をはりつけ、乾いてから背景を塗り、さらに乾かしてはがします。
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胡粉を溶くのは手間がかかるので、2日目の終了までになんとか胡粉と墨の作業を終了させました。ふぐの場合は、残り2色だけです。
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顔料や膠はすべて用意されています。さらに主要な色は膠で溶いて用意してくれているので助かります。
最初の練習では水干絵具を使いましたが、模写では自然顔料のみです。
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完成の状態。
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きれいに「蝶と花」を仕上げていた受講生の方の写真を撮らせていただきました。
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初日には定金先生によるスライド講義もあり、奈良、平安時代の仏画の裏彩色の実例も紹介していただきました。その他にも、京都芸大所蔵の「動植綵絵 模写」2幅を見せていただいたり、裏打ちのデモンストレーションや胡粉製作現場の紹介などもあり、全体として専門的かつ実践的な講座内容で、この暑さの中、京都に通うのは大変でしたが、とても充実した3日間を過ごすことが出来ました。
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裏打ち作業のデモンストレーション。
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胡粉のお話。
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実際に作業をしてみて、いかに若冲が細かい作業を集中力を持って行っていたかが分かりましたが、若冲ブルーベリー説(?)の話も出ていたように、ある程度年を取ってから絵を描き始めた若冲は老眼にもなっていたはずです。図像の細かさと精度を考えると、棟方志功のように顔を近づけて描いていたのかもしれません。
次に「動植綵絵」の実物を見るときには、以前と違う見方ができるように思いました。(n.m.)
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by matsuo-art | 2013-08-15 22:25 | 美術  

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