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NHKBS1スペシャル「dear hiroshima(ディア・ヒロシマ)」

NHKで放映したドキュメンタリー映画「dear hiroshima(ディア・ヒロシマ)」を見ました(BS1スペシャル8/17放送)。

広島で被爆し亡くなった人々の遺品を撮影し続けている写真家の石内都さん。その展覧会がカナダのバンクーバーで開かれ反響を呼びました。「dear hiroshima」は、展覧会開催の準備から観客の反応にいたるまで、1年以上にわたり静かに追い続けたドキュメンタリーです。監督は、日本で育ったアメリカ人女性リンダ・ホーグランドさん。
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被爆したときに身に付けていた衣類、靴、眼鏡。それらのあるものはぼろぼろに痛んでいたり、壊れていたり、靴ひもがなかったり、血痕らしきものが残っていたりもするのですが、どれも大変美しく撮られています。ある場合は裏側からの透過光に照らされて、ある場合は自然の光の中で、ある場合はクローズアップによってディテールを際立たせて。
これらの写真は、色や構図、布地などの質感がとても美しいのです。しかし、その背景には取り返しのつかない事態があるが故に、その美しさは尋常ならざる複雑なものとなっています。

「広島」を美しく撮って良いのか?という批判は石内さんの写真作品に対して多く寄せられるようで、ドキュメンタリーの中でも美術史を学ぶ学生から、カラーを使って悲劇を美化してしまうことに対する疑念を投げかけられていました。それに対して石内さんは次のような趣旨で答えます。
「現実に遺品たちは色を持っている。だから自然に、カラーで撮ろうと思った。よく「美しすぎる」とか言われるけれど、別に美化するとかではなくて、現実にそれらの遺品は美しいのです。色もきれいだし、模様も美しい。
私は自分なりの美意識でプリントしますが、実はこれらは被爆する前はもっと美しかった。広島の写真はそれまで多くが白黒で記録されていて、白黒のイメージです。広島平和記念資料館に行くと、遺品が色を持っていて美しい、というのは発見だったのです。」
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実際、遺品の服は、目が覚めるような青一色だったり、今の我々が着ていてもおかしくないようなおしゃれな柄だったりする。戦時中の日本人は当然地味な服を着ていたわけだが、実は着物を綿入れにして防空頭巾にしたり、モンペの下にかつて身につけていたおしゃれな服を着ていたりしていた、という。遺品のおしゃれな服や、丁寧に継ぎ当てをした部分を見ていると、悲惨な広島の被爆の向こう側にあった当時の人々の生活と生きた証しが見えてくる。そのようにしてこれらの作品は、遺品の持ち主一人一人へ観る者の想いを導いていく。

展覧会に訪れた様々な国籍の人に一番好きな作品を選んでもらってインタビューした内容も興味深く、このドキュメンタリーは多くの人に見てもらいたいと思いました。(n.m.)

by matsuo-art | 2012-08-22 22:08 | TV  

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