「カミーユ・ピサロと印象派展」 兵庫県立美術館 

兵庫県立美術館 カミーユ・ピサロと印象派展へ行ってきました。

ピサロという作家は印象派やポスト印象派の有名どころ(モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホ)と比べると地味な存在ですが、私はピサロの作品が結構好きです。

最初にピサロ的なものを好きになったのは、高校生の時に観た安井曾太郎の最初期の油彩です。安井はフランス修行時代にピサロに影響された風景画を描いています。色合いは古典絵画のように暗いのですが(当時の色そのままなのか、保存の過程でそうなったのか分かりませんが)、それらの作品が持つ質感と誠実さが好きでした。

改めてピサロが好きだな、と思ったのは、2008年に鹿児島市立美術館で同美術館所蔵の作品「ポントワールのレザールの丘」(1882年)を観た時です。肉感的な細かい筆致の集積で描いたこの風景画は、ピサロらしい良い風景画だと思いました。
f0189227_1201979.jpg

ピサロの色合いは他の印象派やポスト印象派ほど鮮やかなトーンではなく、グレーイッシュでくぐもっていますが、そのことがかえって作品に、絵の具の物質性と触感性を与えています。「ポントワールのレザールの丘」ではその触感的なタッチが、近景や遠景のみならず、雲におおわれた空にまで同質にほどこされています。集中力ある密度で全体にタッチが施されていることで、田園の牧歌的風景が何か別ものに見えて来る、それが私が感じるこの作品の魅力です。

今回この「ポントワールのレザールの丘」も出品されていて、再びじっくり観る事ができました。ただ、この作品に匹敵する私が思う”ピサロらしい”作品は、この展覧会の中では、「エヌリー街道の眺め」(1879年)と一時ゴーギャンが所有していたという「オニーのラヴィニエールの小道」の2点くらいしかありません。

ピサロはセザンヌといっしょに野外制作をしていた時期がありますが、ピサロが”ピサロらしい”作品を描いていたのはセザンヌと制作をともにしていた時期と重なると思います。ピサロはその後点描派の影響を受けたり都会の風景をモチーフにしたようですが、それらから”ピサロらしい”感触を受ける事はできませんでした。
私はいままで9歳ほど年上で皆に親しまれる性格のピサロが、気難しい性格のセザンヌを励まし、彼に影響を与えていた、と思っていました。でもこの展覧会を観て、その影響関係は単純に一方的なものではなく、(本人も語るように)ピサロもセザンヌから影響を受けていたのだな、と感じました。(n.m.)
[PR]

by matsuo-art | 2012-08-10 22:17 | 展覧会  

<< NHKBS1スペシャル「dea... キアゲハの羽化 >>