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「セザンヌーパリとプロヴァンス」展、「大エルミタージュ美術館展」 /国立新美術館

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東京で展覧会を3つ観てきました。
乃木坂の国立新美術館「セザンヌーパリとプロヴァンス」展と「大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西欧絵画の400年」、そして六本木の森美術館の「イ・ブル展:私からあなたへ、私たちだけに」です。

セザンヌ展は、セザンヌの残した多様な画業を、「初期」「風景」「身体」「肖像」「静物」「晩年」という切り口で構成・紹介していて、どのコーナーにも目玉になるような有名作品が必ず1点以上あり、また、僕自身がセザンヌの実作を観るのが久しぶりなこともあって、大変新鮮に楽しむことができました。

個人的に一番うれしかったのが、観てみたいと思っていた下の「松の木」の絵(図版は部分)があったこと。
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あと、この岩の絵もなかなかにシブい絵でした。
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この青い花瓶の絵もありましたが、これを観ながら
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研究室でのデッサンでこんな絵を描いたら必ず直されてしまうような事をいろいろとやってくれているなあ、と改めて可笑しくなりました。(もちろん、セザンヌがこうした絵でやろうとした事をわかった上で言っているんですよ。ー笑)

それから何と言っても、この展覧会最大の目玉はこれでしょう。
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会場全体の作品を観て改めて思った事としては、絵の具のつき方が意外に薄塗で、また非常に繊細な筆運びをしているという事です。その上で、形態がしっかりと見えて来るように、線描やアウトライン周辺のトーンなどで明暗のアクセントを絶妙に付けているという事です。
あと思った事は、「セザンヌは一日にして成らず」。当たり前の事ではあるのですが、セザンヌの生涯をかけたたゆまぬ創造過程の中で、彼自身の語法が発見され、改良され、活用され、進歩し続けて行こうとしている様にやはり感銘を受けました。

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セザンヌ展の会場を出ると、上の会場で「エルミタージュ美術館展」をやっています。この展覧会の目玉はマチスの「赤い室内」で、それを観たいと僕も思っていたのですが、それ以外にもやはりいい絵がありました。ルネッサンス、バロック、ロココ、近代と、ざっくりと時代を区切って比較的大きな作品がゆったりと掛けられています。
ルネッサンス・ヴェネツィア派のティツィアーノやヴェロネーゼなどが観られたのも収穫でしたが、中でも一番感銘を受けたのはレンブラントのこの作品でした。
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1982年、僕が大学1年のときにブリジストン美術館で大きな「レンブラント展」が開催され、僕はあこがれのレンブラントを是非観たいと京都から東京まで観に行きました。この絵はその時に観ているはずで、30年ぶりの再会ということになります。
全体には褐色が基調の落ち着いたトーンの絵ですが、グレージングなどで薄く他の色相も掛けられており、意外にカラフルな印象です。ラフな筆触で描かれた部分、厚く絵の具が盛られた部分、素早い筆致で絵の具が引っ張られた部分、グレージングの部分など、絵を構築している全ての部分がそれぞれ意味を持って有機的に関係し合っています。そのような造形要素が即物性を感じさせたままイメージへと転化し、画面全体でじんわりと「語りかけて来る」様は、西欧の絵画と言うよりは、むしろ水墨画のようでもあり、「レンブラントは西洋とか東洋とか言った概念を超えているなあ」とすっかり感心してしまいました。
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しばらくじっくりと見入ったあと、レンブラントの余韻をお腹にほこほこと感じながら国立新美術館を後にして、森美術館へと向かいました。(つづく) (Y.O.)

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by matsuo-art | 2012-05-29 00:33  

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