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榎忠展/兵庫県立美術館

兵庫県立美術館で開催されている榎忠展に行ってきました。
「美術館を野生化する」という副題が付けられていましたが、まず、このタイトルに非常に興味を引かれました。「美術館を野生化する」って、一体どういうことなんだろう。
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確かに会場には非常にワイルドな雰囲気が漂っていました。
まず、会場に入ると、ずらりと並べられたライフルの形をした彫刻がただならぬ雰囲気を醸していますし、続いて機械部品を組み合わせて作った大砲が異様な存在感を持って鎮座しています。
大小の無数の薬莢(やっきょう)を塚のように積み上げた作品、かつて建築物の一部だった鉄材を裁断してごろりと並べたもの、巨大な円筒形の鋼管を溶断して空間に配置したもの、そして、無数のステンレスの金属部品を旋盤で加工して積み上げ、あたかも未来都市のような幻想性を感じさせる作品など、鉄! 鉄! 鉄! の世界でした。
大学院を出てから3年ほど彫刻の工房で働いていたことのある僕としては、大きな鋼材がゴロゴロと会場内に並んでいる様を見て、「搬入、大変やったやろな〜」と変なところで感心してしまいました。

機械部品の大砲は、過剰な威圧感と、そのような威圧感をまとっていることの滑稽さを同時に感じましたし、無数の薬莢が塚のように盛り上げられている作品の真鍮の輝きに魅せられる一方、「これは生命を殺傷するために放たれた弾丸の残りなんだな」と思うと、その膨大さにゾッとせざるを得ませんでした。武器をテーマにした榎氏の作品にはそのような両義性があると思いましたし、そうであればこそ「アート」なのだと思います。

そして、とりわけ感銘を受けたのは、そのストイックなまでの作業量を感じさせるステンレスの未来都市でした。やはりこれは息をのみますね。子どもの頃、積み木やおもちゃ、その辺にある日常生活の道具や部品などを手当たり次第に積んだりして、建物や風景などを作った経験は誰にでもあると思いますが、そんな子ども時代の無邪気な行為を徹底的に突き詰めて、圧倒的な物量と作業量で展開したかのような圧巻の展示に、いつまでも見入っていたいような気持ちになりました。

最近では珍しい、「彫刻」を感じさせる展覧会でした。(Y.O.)
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■会期
2011年10月12日(水)〜11月27日(日)47日間
会期中無休
開館時間:午前10時〜午後6時(金・土曜日は午後8時まで)入場は閉館の30分前まで
■会場
兵庫県立美術館3階企画展示室他
■観覧料
一般1,200円/大学生900円/高校生・65歳以上600円/中学生以下無料

by matsuo-art | 2011-11-25 16:15  

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