「若冲水墨画の世界」展

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GWの休みを利用し、京都相国寺の承天閣美術館に「若冲水墨画の世界」展を見に行ってきました。
鹿苑寺(金閣寺)大書院にあったもので、今回50年ぶりに全面大修理が完成し、その記念の展覧会で、50面全ての展示でした。
若冲の展覧会は毎回入場者が多く、少し前にTVの特集で若冲が取り上げられていたのもあって、混雑するのではないかと気構えて行きましたが、会場内では人を避けたり待ったりすることなく、穏やかに見ることができました。
作品保護のガラスと作品自体が近く、絵を数十センチのところからまじまじと眺めることが出来たのが、今回の一番の収穫でした。
襖絵は床面と同じ高さでの展示で、実際の目線の高さで見ることが出来ます。靴を脱いで上がる絨毯敷きのフロアに、しゃがんだり正座をしたりしてじっくり観察することで、描いた手順を想像しながら見ることが可能でした。

襖絵などはにじみの少ない紙かにじみ止めがされている紙が用いられているようで、非常に大雑把な言い方で当てはまらない部分もありますが、薄墨から起毛して、ある程度の流れや塊を薄墨で描いた上に、中くらいの濃さの墨、そして濃墨を置く描き方をしているところが多いように思えました。
まず薄い墨でふっくらした全体像が浮かび上がり、その上に少しずつ墨を濃くしながら描写が入っていく様子を、絵を前にして想像すると、絵がより活き活きと見えてきました。

また、薄墨で当たった後の次の墨が入るまでの時間を感じてみました。筆と筆の間に、墨の干渉がほとんどない箇所が多いように思いました。小さい図版で見るとにじませて描いているように見えていますが、この襖絵群は実際はにじみで作られた表現が少ないのです。逆ににじませながら描いている場所を見つけることが面白く、紙ごとに異なる効果を敏感に感じ取って描いている若冲の腕に尊敬するばかりでした。
背景全体にも薄い墨が施され、場所によっては、例えば鶴の背の線描部分などは方ぼかしにしながら背景と同化しているし、部分的には細い余白を残していたり、モチーフに重ねて塗ってありにじみを感じる部分もあります。その場その場での判断を筆にのせていく様を、追いかけて見ているような気がして、リアルに筆遣いを感じることができました。
そうやって、手の流れを追ってみると、以外に濃い墨の量が少ないことにも気付かされました。若冲の水墨は墨が薄いおぼろげな印象はなかったので意外でした。
思いっきり濃い墨を効果的に入れることで、しっかりした世界を作り出しているようでした。

今回展示には障壁画意外に掛け軸も数点展示がありました。
掛け軸の方はにじみが多い紙で、「筋目描き」の絵がたくさんありました。
墨で和紙に線を書くと、紙によって差はありますが、筆の通った跡が残ります。その墨同士の干渉で出来る筆跡の線を活かした描き方を「筋目描き」と呼び、若冲が用いた画法として有名です。筋目描きはふっくらしたにじみの強い紙にはっきり現れる傾向があります。
筋目の強く出る紙は、筆の一筆一筆が確実に画面に現れるので、実際にやってみないと分からないところもありますが、上記のような濃淡の墨の重なりの表現とはまた違った手順になりそうです。


今回、一歩踏み込んで絵に向き合えたことで、豊かな時間を過ごしました。
水墨画は一見地味な墨の世界ですが、和紙には厚みがあり、表面に乗った墨の発色だけではなく、紙の奥にしみこんだ墨の層が透過して見えてくる奥行きに、なんとも言えない深い味わいがあります。これは紙の表面だけに印刷した画集などでは味わえない美しさです。
実はこの展覧会は5月10日に会期が終わります。
展示されていた襖絵は承天閣が保存しているもののようです。今後もまた目にする機会があると思いますので、ぜひまた展示があれば足を運んで欲しいと思います。 (y.m.)

承天閣美術館ホームページ
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by matsuo-art | 2011-05-02 20:04 | 展覧会  

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