京都国立近代美術館「Trouble in Paradise/生存のエシックス」展

京都国立近代美術館「Trouble in Paradise/生存のエシックス」展に行ってきました。

京都市立芸術大学創立130年記念行事の1つでもあるこの展覧会、私の先輩や同期の作家、および海外の作家で構成された12のプロジェクトが展開されています。正直、取っつきにくいタイトルで一般の人はなかなか行きにくいと思いますし、実際、普通の美術展を求めて入館した人には科学実験博覧会然とした展示に違和感を覚えるでしょうが、結論から言うと、とても楽しめる企画でした。

ただし、私は事前にネット上にある情報を読んでおおかた内容を理解して行った上に、プロジェクトチームのまとめ役の高橋悟さんの解説ツアーに会場でちょうど参加できたおかげで、十分に楽しめた側面もあります。説明を聞かないと面白さがわからない部分もありますので、行った人は積極的にスタッフや作者の人に話を聞く事をお薦めします。また、小学生の息子といっしょに行ったのですが、子供がちょうどはまる体験型展示が複数あって、そうした意味でも楽しめました。

さて、美術館に着くとまず、入り口の外に土壁による建造物があります。井上明彦さん制作のアクアカフェです。井上さんご本人もおられましたが、その手伝い人に当研究室出身の一回生Tさんがいたのでびっくり。
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アクアカフェは120年前の明治時代にできて美術館脇にも流れいている琵琶湖疎水の水と、開発の為に壊された江戸時代の民家の土、竹林の竹、からできた建造物です。中では非常時のために備蓄している飲料水「疎水物語」を、変わった形をした容器から自由に一つ選んで振るまってもらえます。120年前の開発の恩恵や、現在の開発で失っていくものを顕在化させて、そこに各自が思いを馳せるプロジェクトになっていると思います。ユニークな外装の写真を撮り忘れたので、それは下記エシックス展ブログを見てください。

これは石原友明+中原浩大による「盲目のクライマー/ライナスの散歩」です。二人の作家の違う意図を一つの形態に重ねたという意味では異色のプロジェクトですが、どちらかというと石原さんの意図を強く感じる企画でした。息子が特にこれに反応して、何度も上ったり降りたり滑ったりしていました。
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こちらは中原浩大+井上明彦による「関係概念としての知覚的自己定位の研究」。むずかしいタイトルですが、要するに宇宙空間でライナスの毛布(安心感と結びついた感覚を与えるもの、スヌーピーとチャーリーブラウンより)にとってかわるものなどの考察です。
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高橋悟+松井紫朗の「Trans-Acting: 二重軸回転ステージ/浮遊散策」。微細な波のように揺れる大掛かりな円盤装置の上に乗ることができ、映像が投影されていきます。
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こちらは海外の作家による、とても小さな音を聞くことができるマイク。これを木の幹に差し込めば樹木を食う虫の音を聞く事ができて、将来的には虫とコミュニケーションするツールとしていきたいという。他にも犬よりも高度ににおいを嗅ぎ分けることのできるハチを使って病気のにおいを嗅ぎ分けさせ、診断に利用する研究をしている作家の作品もあり、これら冗談とも本気ともわからないような研究ですが、そうした発想は理系の専門からは出てこない芸術系ならではですし、それぞれちゃんと国から補助金をもらって研究しているというのも面白いところです。
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今日は視線を共有する装置のワークショップも行っていました。
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会期は残り二日ですが、今から行く人は事前には次のページを見ておくと良いと思います。
生存のエシックス ブログ
高橋悟さんのインタビュー(AMeet京都から世界へ)
高橋悟さんによるカタログ掲載の歩行ガイド
カタログ掲載の歩行ガイドについては、いきなり柄谷行人や蓮實重彦への言及から始まるのでその手の本を読んでないとむずかしく感じますが、本文04、05、06、07は具体的な展示の解説でわかりやすくなっています。
(n.m.)

by matsuo-art | 2010-08-20 22:32 | 展覧会  

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