北野武「アウトレイジ」 カンヌ映画祭

北野武氏の新作映画「アウトレイジ」がカンヌ映画祭コンペティション部門に出品されています。氏の原点でもあるヤクザ映画へ回帰したこの作品、賞がとれれば良いと思うのですが、公式上映後の”エンターテイメントな映画、激しい暴力描写”といった一般評を聞くと、むずかしいのかなあ、とも思います。
賞を取るには大衆受けするよりも批評家受けする部分が必要でしょうし、ベネチアで金獅子賞を受賞した「HANA-BI」のように、暴力の中にも人間の悲哀を描く部分がどれくらいあるか、といったところが分かれ目でしょうか。

北野氏は、存在感のある役者さんを起用する、あるいは俳優に存在感を与えるのがうまい監督ですが、これまでの映画でも、大杉蓮氏、寺島進氏など北野組常連となった2人はもとより、豊川悦司氏(「3-4X10月」)、渡哲也氏(「BROTHER」)などは、ほんの一瞬登場しただけなのに存在感抜群の、とても印象深いあり方でした。

そんな北野映画の役者さんの中で、特に私が好きなのは、ガダルカナル・タカ氏です。

最初に魅了されたのは、「3-4X10月」での、元やくざの草野球コーチ役。話をつけに組事務所で静かに立つ姿は、日本映画の新しいリアリティの扉をたたいた、ぞくぞくするようなシーンです。「3-4X10月」は、私が一番好きな北野映画でもあります。
次に「みんな〜やってるか!」の飛行機の操縦士。その馬鹿げた姿は底抜けに明るく、見ていてうれしくなります。「みんな〜やってるか!」は作品としてはまとまりのない失敗作かもしれませんが、後半部分を撮り足して再編集すれば、かなり面白い映画になるのでは?とも思っています。
そして「座頭市」。ラストシーンの、あのタップダンスの開放感には、タカさんの楽しそうな笑顔が欠かせません。

今回の「アウトレイジ」俳優陣も期待が持てますが、特に石橋蓮司氏の起用はうれしいところです。74年のATG映画「竜馬暗殺」での中岡慎太郎役の石橋氏が私は大好きで、ひさびさにあのような存在感が出ているのではないかと期待しています。

今年はポンピドゥーセンターでの上映会やカルティエ現代美術財団での個展と、フランスでキタノイヤーの追い風が吹いているだけに、賞が取れるかどうか、発表は現地時間の23日です。(n.m.)

by matsuo-art | 2010-05-20 00:58 | 映画  

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