3Dアバターと龍馬伝

もう1ヶ月以上前のことですが、3D映画「アバター」を観ました。

以前に天保山IMAXシアターで恐竜発掘に関する3D映像作品を観ていて、その体験で3D映画の可能性を感じていました。モササウルスのような海竜が泳ぐCGシーンから始まるその映像は、いきなり観る者を古代の海へと立体映像で引きづり込むのです。博物館の実写シーンでは、展示してある大きな首長竜の骨格化石をカメラがなめ回すように上昇しながら、実際に入ることができない骨格の内側も立体視で見せてくれます。卵から孵る恐竜や古代の羽虫が目の前にいるかのように描かれていました。ですから3Dアバターは映画館に観に行く価値があるだろうと思ったのです。
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アバターの世界には不思議な動植物が生息しています。高校生の頃好きだったイラストレーター、ロジャー・ディーンの世界が、まさしく現実になったかのような映像です。さすがに体毛がふさふさあるようなクリーチャーはCGでは苦手らしく出てきませんが、それでもこの不思議で複雑なジャングルの世界をリアルに描き出すCGと3Dの技術には驚きました。

この映画は3Dだからといってモノが飛び出すなどのこれ見よがしの演出はあまりなく、”奥行き”という3次元の世界を見せてくれます。ただ、じっくりとその奥行きのある世界の細部を見たいのに、それを拒んでいるかのように1つ1つのカットが短いのと、常に移動していて落ち着きのないカメラワークは気になりました。カット割りやカメラワークは従来のアドベンチャー映画と同じなのです。2Dバージョンもあるのだから仕方ないかもしれませんが、3Dゆえの落ち着いたカット割りを考えてよいと思いました。

それとつい最近知ったのですが、アバターの3D上映には映画館によって4つの方式があるようです。私が観たOSシネマズ ミント神戸は、どうやらXpanD方式で、先のIMAXシアターで観た作品に比べて、画面が暗い、立体視も若干弱い、メガネが汚れている、と私が感じたのは間違いではなかったようです。方式としてはIMAX3D方式の評判がよく、視野も明るく、細部もよく見えるようです(今からミント神戸へ観に行く人には、メガネ拭き持参で吹き替え3Dをお薦めします)。

内容的には「異星の土地と文化を舞台にした典型的なストーリー」と監督自身が述べているように”ファンタジーでくるんだ侵略戦争もの”です。しかし、このような侵略戦争のストーリーが”典型的”ということ、つまり歴史的にも繰り返されているということには考えさせられます。アバターを観たその日、家に帰ってNHKドラマ「龍馬伝」を観ながら、最近読んだ杉本博司氏の本に書かれていた2つの視点を思い出しました。アバターの惑星「パンドラ」が幕末の日本と重なります。

1つは、幕末に将軍慶喜が徳川体制の維持のみを考えてフランスからの武器供給の申し出を受けていたら、日本はフランスに侵略されていたかもしれない、と言うことです。あの混乱の中で、日本は結果的に”侵略される戦争”を回避できました(ただし、吉田松陰の弟子たちがその後侵略する側にまわったという視点もある)。
もう一つはアメリカ総領事ハリスの通訳であったヒュースケンの悲劇です。当時日本に駐在した外国人の中でも一番の親日家であり日本の自然にも魅了されていたヒュースケンが、皮肉にも攘夷派の刺客の犠牲になったのです。文化の相違と利害関係の中で生まれた悲劇を、アバターも描いています。

アバターと同じように落ち着きのないカメラワークの龍馬伝を観ながら、そのようなことについて考えたのでした。(n.m.)
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by matsuo-art | 2010-03-27 01:16 | 映画  

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