山下裕二「日本美術の二十世紀」

NHK日曜美術館「長谷川等伯特集」の再放送が今日あると、先週日曜日のこのブログに書きましたが、他の番組が優先されてありませんでした。民放とちがってたいてい再放送してくれるのがNHKのよいところですが、たまにこういうこともあります。また再放送してくれるでしょうか。
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山下裕二著「日本美術の二十世紀」(晶文社)を読みました。
山下裕二氏は日本美術史の専門家ですが現代美術家との交流もあり、若冲、廬雪、雪村、白隠などの作品について一般にもわかりやすい言葉で書いて、近年広く紹介した功績があります。この本では、「一九五六年の雪舟」「一九七〇年の伊藤若冲」「一九九五年の源頼朝像」などの見出しにあるように、ある作品、作家を取りあげて、その評価がどのような変遷をたどって来たか、1つの時期をポイントにして書いています。美術作品の専門家によるその時々の評価や美術史家の仕事の裏側を書いたエッセイであり、こうした文章も、もうひとつの美術史として貴重だと思いました。

「一九五〇年の長谷川等伯」という一文では、戦前「松林図」は、現在のように第一級の評価が下されていなかったということが書かれています。それでは戦後どのような経緯で今の評価に安定したのか、というところまでは研究書ではないゆえ、それほど詳細に書かれていないのは残念です。

でも「一九三九年の雪村」では、ある時期に雪村の小品がやたらと持ち上げられたことがあり、ベルリンの日本美術展にこの作品が出品された時、ヒットラーが賞賛したことがその理由であると書かれていて、そんなこともあったのかと興味深く読みました。山下氏自身、当時のその流れの中で美術全集を編纂してしまったという反省があってのことでしょう、特に本文で取り扱っているわけではない雪村の秀作「呂洞賓図(りょどうひんず )」がこの本の表紙になっているのも面白いところです。(n.m.)
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by matsuo-art | 2010-03-14 22:21 |  

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