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「日本は負けますよ」蓮實重彦

6月17日の朝日新聞夕刊文化欄に蓮實重彦氏のコラムが載った。「誰かが何かの拍子にふと口にした言葉は、記憶のはしに引っかかってなかなか消えない」として、戦時中の「まだ空襲もほとんど体験していない」昭和18年、「海軍の優秀なパイロットだと聞かされていた遠縁のケンジさん」が夕食後に母と祖母の前でいきなり口にした「日本は負けますよ」という言葉について語っている。
「覚悟しといてください、と表情も変えずにいう制服姿のケンジさん。」

それから時が経ったある日、蓮實少年は、日本軍の海戦での被害を告げる朝のニュースの中で、空中戦の戦死者として挙げられたケンジさんの名前を聞く。
「幼いわたくしは、その朝、日本の敗北を確信した。」
氏が7才の頃の体験談である。

今、この時期に語られたこのコラムは、それこそ私の心に「引っかかってなかなか消えない」。世界の反対を顧みず核の配備を押し進めて孤立する近隣国の姿は、実はわずか70年ほど前の日本の姿でもある。そこにはいくら戦局が不利になっても”神風が吹く”と信じていた国民があった。また、アメリカが1930年代の不況から立ち直ったのはニューディール政策によってではなく、戦争特需のおかげだという話もよく聞く。

オバマ大統領のグリーン・ディールに期待はするものの、はたしてどこまで有効なのか。
しかし我々は、過去とよく似た情勢の中で、なんとしても戦争にだけはなだれ込んではいけない、という覚悟をしておく必要がある。(n.m.)

by matsuo-art | 2009-06-19 22:43 | その他  

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